国外旅行業者への手数料支払は国内取引に該当せず
東京地裁令和3年6月2日判決
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訪日ツアー客向けの免税店を展開する法人が、国外のツアー手配業者に自社店舗への客の誘導を依頼し、売上に応じて手数料を支払っていた。法人はこの手数料を国内の課税仕入れとして消費税の計算を行い、確定申告をしていたところ、課税庁は「国外取引に該当する」として否認。東京地裁は、国外の業者がいずれも国内に事務所等を有していないため、これらの取引は「国内で行った課税仕入れ」には該当しないと判断、法人の請求を棄却した。
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海外からの訪日ツアー客向けの輸出物品販売場(免税店)を経営するX社は、複数の国外ランドオペレーター(国外旅行会社の依頼を受け、旅行先のホテル、レストラン、ガイドやバス・鉄道等の手配・予約を専門に行う業者)との間で、各ランドオペレーターが依頼を受けた訪日ツアーの客がX社の店舗で買い物をした場合に、売上の一部を手数料として支払う旨の契約を締結していた。
X社は、平成24年3月1日から平成28年2月29日までの各課税期間において、各ランドオペレーターから受けた役務の提供が「国内において行った課税仕入れ」に該当するものとして、販売手数料の合計金額を課税仕入れに係る支払対価の額に含めて消費税等の確定申告を行ったところ、税務署から、各ランドオペレーターによる役務の提供は「国内において行った課税仕入れ」に該当しないとして更正処分等を受けた。X社はこの処分を不服として、提訴に至った。
裁判でX社は、本件手数料に係る消費税額が仕入税額控除の対象となるか否かの判定においては、役務の提供を受けるX社がその便益を実際に享受できているかという基準に基づいて判断すべきとした。
その上で、X社は訪日ツアー客が実際にX社の店舗において商品を購入し、X社の店舗の売上が増加することを期待して手数料契約を締結したのであるから、「バスでの移動中等に訪日ツアー客にX社の店舗・商品の紹介・宣伝を行い、店舗まで引率し、店内を案内すること」
という役務の提供こそが、実際にX社が便益を享受し、「消費」することができる手数料と対価関係にある役務に該当すると指摘。これらの業務は専ら日本国内で行われているため、役務の提供場所は日本ということになり、「国内において行った課税仕入れ」に該当すると主張した。
東京地裁はまず、本件手数料と対価関係にある各ランドオペレーターの役務の内容は、(1)各ランドオペレーターが各ガイドを選任し、X社の店舗にツアー客を誘引して、買い物をさせるように指示すること、(2)その指示に基づいて、各ガイドがX社の店舗にツアー客を誘引して買い物をさせること、(3)各ランドオペレーター又は各ガイドがX社に対し、ツアー客の名簿を送付し、本件手数料の計算ができるようにすることにより構成されるX社の商品の購入に向けられた一連の行為であると認定。
各ランドオペレーターは国内に事務所等を有しておらず、各ランドオペレーターによって行われた上記(1)、(3)の役務の提供は、各ランドオペレーターの国外の事務所等から国内のX社及び各ガイドに対して行われたものであり、一方、上記(2)、(3)の役務の提供は国内で行われたといえ、役務の対価である本件手数料の額が国内・国外に合理的に区分されているとはいえないと指摘した。
そうすると、本件手数料と対価関係にある役務の提供は、消費税法施行令6条2項6号(資産の譲渡等が国内で行われたかどうかの判定において、国内及び国内以外の地域にわたって行われる役務の提供その他の役務の提供が行われた場所が明らかでないものは、役務の提供を行う者の役務の提供に係る事務所等の所在地とする規定)に該当すると認められ、各ランドオペレーターはいずれも国内に事務所等を有していないから、「国内において行った課税仕入れ」には該当しないと結論づけた。