通院のためのガソリン代や高速道路利用料は医療費控除の対象外
令和5年11月6日裁決
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病院へ通院するため使用した車のガソリン代等が、医療費控除の対象となる医療費に該当するかが争われた。審判所は、ガソリン代等は所得税法施行令207条3号規定の「人的役務の提供」の対価とは認められず、所得税基本通達73-3にいう通院費に該当しないとして、控除の対象とはならないとした。
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Xは、平成30年分~令和2年分の所得税等について、青色申告により期限内に申告した。
令和4年2月及び6月、Xは、この各年分の医療費控除の対象となる医療費の金額に、病院への通院に要した自家用車のガソリン代・高速道路利用料金・駐車場利用料金(平成30年分が73,338円、令和元年分が42,490円、令和2年分が41,111円)が含まれておらず、これらガソリン代等を控除の対象とすべき等として、各年分の所得税等について2回に分けて更正の請求をした。
令和4年6月、原処分庁は、更正をすべき理由がない旨、通知処分をした。
Xは処分を不服として審査請求に及んだ。
Xは、所得税基本通達73-3《控除の対象となる医療費の範囲》は、所得税法施行令207条《医療費の範囲》1号に掲げる「医師又は歯科医師による診療又は治療」の対価について、それに付随・関連する費用として通院費も含まれる旨を明らかにしたものであるから、本件において通院のために要したガソリン代等も通院費として医療費控除の対象となる等と主張した。
これに対し審判所は、下記のように明示した。
(1) 通院費は病院等へ往復するための旅費・交通費であって、医師等による診療・治療に対して直接支出されるものではないため、所得税法施行令207条1号に掲げる費用には含まれない。
(2) 所得税基本通達73-3にいう通院費の取扱いは、あくまで所得税法施行令207条3号に掲げる「病院、診療所又は助産所へ収容されるための人的役務の提供」の対価の解釈として許容される範囲内に限られるところ、本件のガソリン代等はいずれも商品の購入の対価又は設備・施設等の利用の対価であって人的役務の提供の対価とはいえないことから、通院費に該当しない。
したがって、原処分はいずれも適法であり、Xの審査請求には理由がないとして、これを棄却した。