市街化調整区域への「地積規模の大きな宅地」評価の適用は不可
令和6年3月6日裁決
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被相続人から土地を相続した者が、相続土地は「地積規模の大きな宅地」に該当するとして更正の請求を行った。しかし、この土地は市街化調整区域に所在しており、都市計画法34条10号、11号に規定する区域には該当していなかったため、課税庁は更正をすべき理由がない旨の通知処分を行った。相続人はこれを不服として審査請求に及んだものの、審判所も課税庁の主張どおり「地積規模の大きな宅地」には該当しないとして、相続人の請求を棄却した。
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甲は令和2年8月に死亡し、相続が開始した。相続人は妻と長女X1、次女X2、次女の夫(養子)X3の4名であった。
甲が所有していた本件各土地については、X2、X3が2分の1ずつ相続。本件各土地は市街化調整区域に所在し、相続税の評価上は倍率地域であった。
甲は生前、本件各土地につき、L社との間で事業用定期借地権設定契約を締結。L社は、都市計画法34条12号等に基づき、本件各土地を含む周辺区域について開発許可を受けており、相続開始時点ではコンビニエンスストア等の用地として利用されていた。
X1らは、相続税の申告において、本件各土地を定期借地権の目的となっている宅地とし、さらに小規模宅地等の特例に基づく減額をして約1億1,000万円と評価した。令和4年8月、X1らは、本件各土地が「地積規模の大きな宅地」に該当するとして、約6,500万円と評価を減額し、更正の請求を行った。原処分庁はこれに対し更正をすべき理由がない旨の通知処分を行ったことから、X1らは令和5年3月、この処分を不服として審査請求に至った。
財産評価基本通達20-2(地積規模の大きな宅地の評価)では、その適用対象から除外される宅地として「市街化調整区域(都市計画法第34条第10号又は第11号の規定に基づき宅地分譲に係る同法第4条((定義))第12項に規定する開発行為を行うことができる区域を除く。)に所在する宅地」が掲げられている。
X1らは本件各土地の通達適用可否について、以下のように主張した。
(1) 評価通達20-2の趣旨は、宅地を分割分譲する場合に発生する減価を反映させることにある。本件各土地は、市街化調整区域のうち都市計画法34条12号の規定に基づき宅地分譲に係る開発行為を行うことができる区域に所在し、宅地の分割分譲が可能であるから「地積規模の大きな宅地」に準じて評価することができる。
(2) 通達の適用対象は、市街化調整区域のうち都市計画法34条10号、11号の区域とされているが、評価通達改正時の「あらまし」によると、市街化調整区域であっても10号・11号区域は戸建住宅用地としての分割分譲が法的に可能であることから、地積規模を満たす場合には「地積規模の大きな宅地」に該当するとの説明をするにとどまっている。したがって、通達の適用対象宅地が戸建住宅用地として利用されるのが標準的である地域に所在する宅地である必要はない。
(3) 戸建住宅用地として利用されるのが標準的である地域かどうかは、都市計画法34条10号や11号、又は12号の規定により定まるものではなく、それぞれの自治体の条例の内容に左右されるものである。
これについて審判所は、まず、市街化調整区域は「市街化を抑制すべき区域」であり、原則として宅地開発を行うことができない地域であることから、戸建住宅用地としての分割分譲に伴う減価が発生することが想定されていないため、「戸建住宅用地としての分割分譲が法的に可能であり、かつ、戸建住宅用地として利用されるのが標準的である地域に所在する宅地」を対象とする本件通達は、原則として適用できないとする趣旨のものであるとした。
ただし、10号区域・11号区域については、市街化調整区域であっても開発行為を行うことができることから、戸建住宅用地としての分割分譲が法的に可能である上に、戸建住宅用地として利用されるのが標準的である地域といえるため、通達の適用対象範囲に含むこととしたものと解するのが相当であると指摘。
これに対し12号区域の開発行為としては、分家に伴う住宅、収用対象事業の施行による移転等による建築物、社寺仏閣、研究施設等の建築物の用に供するものが予定されており、仮に宅地分譲に係る開発行為が可能な区域に所在していたとしても、通達が適用対象とする「戸建住宅用地としての分割分譲が法的に可能であり、かつ、戸建住宅用地として利用されるのが標準的である地域に所在する宅地」の範囲に含むべきものではないとしたものと解するのが相当とした。
よって、本件各土地は10号区域・11号区域に所在しないことから、通達の適用対象とはならず、「地積規模の大きな宅地」に準じて評価することはできないと判断し、X1らの請求を棄却した。