領収書等を捨てる行為は「隠蔽・仮装」に該当
令和6年3月25日裁決
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開業以来、会計伝票や領収書を保管せず、一切申告をしていなかったラーメン店主に対し、「隠蔽・仮装」を認定し、重加算税の賦課決定処分を行った。店主は、自分には税務に関する知識がなく、領収書等を捨てた行為は「隠蔽・仮装」には該当しないと主張したが、審判所は、領収書等を捨てることで売上金額や必要経費が不明になることを認識していたと認められ、このことは「隠蔽・仮装」に当たるというべきと判断。審査請求を棄却した。
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平成21年9月にラーメン店を個人開業したXは、当初、税理士に税務顧問を依頼し、税務署に開廃業等届出書、青色申告承認申請書を提出。2か月程度は税理士の指導に従い、会計伝票を集計し、毎日の来店者人数と売上金額をノートに記載、領収書等を保管していた。ところが、その後は税理士の関与を断り、売上げに係る会計伝票はおろか、仕入れに係る領収書等も捨てるようになってしまった。
原処分庁の調査担当職員は令和4年4月、Xの平成29年~令和3年の所得税・消費税の税務調査を開始し、Xの長年にわたる無申告が発覚。Xは各年分の所得税・消費税の期限後申告書を提出した。
原処分庁はこれを受けて、令和4年7月、無申告加算税・重加算税の賦課決定処分を行ったが、Xはこの処分を不服として審査請求に至った。
Xはまず、自らの知見に基づいて開廃業等届出書等及び青色申告承認申請書を提出したものではなく、簿記や記帳の知識も持ち合わせていなかったところ、調査担当職員から指摘されて初めて、売上げや支払等を記録して保管する必要があるという税務に関する相応の知識に触れたのだと指摘。
帳簿書類を作成せず、各会計伝票等も保管せずに廃棄して、所得税・消費税に係る確定申告をしなかったことは、ひとえに請求人の無知が招いた結果であり、意図的に当該申告をしなかったのではないため、国税通則法68条2項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実はなかったと主張した。
これに対し審判所は、まず、Xが各年分において、青色申告に係る帳簿の備付け、記録及び保存をしていなかった上、各年分において事業に係る各営業日の売上金額等を記録せず、各会計伝票、各受取協力金に係る支払決定通知書及び本件事業に関する支払に係る領収書等を保管することなく全て捨てており、これによって、各年分の事業に係る売上金額及び必要経費の金額を不明にしていると事実確認。
そして、(1)これらの行為をしたのはX自身であること、(2)事業の開業から2か月程度の間は、税理士の指導の下、各会計伝票を集計する等して各営業日の売上金額等をノートに記載し、領収書等を保管していたことがあり、事業に係る売上金額等を把握するには、これらの集計や保管などの行為が必要であることを認識していたはずであったこと、(3)税務調査において、事業に係る売上金額及び必要経費等について確認できる資料等の提示を求められたものの、当該資料等はない旨の回答をしたことからすれば、X自身、各会計伝票、事業に関する支払に係る領収書等を捨てることで、各年分の事業に係る売上金額及び必要経費の金額が不明になることを認識していたというべきであると指摘。
そうすると、Xは、各会計伝票、領収書等を捨てることで、故意に真実の各年分の売上金額及び必要経費を隠匿し、かつ、故意に真実の本件各課税期間に係る課税売上高を隠匿したというべきであり、国税通則法68条2項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実があったと認められると判断。重加算税の賦課決定処分は適法とした。