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税理士向けニュース記事

注目判決・裁決例(令和6年3月25日裁決)

2024年12月06日
「比準要素数1の会社」外しの事案に総則6項を適用
令和6年3月25日裁決
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相続開始の2か月前、被相続人が代表を務めていた同族会社において、剰余金の配当と事業年度の変更が行われたため、相続税額が半減した。原処分庁はこの行為について、「「比重要素数1の会社」に該当しないよう工作したもの」と認定し、評価通達総則6項により否認。相続人は租税負担軽減の意図を否定し、処分の取消しを求めたが、審判所は、相続人・銀行・税理士の三者が相続対策スキームを実行したと判断し、相続人の主張を斥けた。
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Xは、不動産管理等を行うA社の同族株主である。
平成29年3月、A社の臨時株主総会が開催された。同年5月には、この総会に基づき、下記が行われた。
・株主6名に対し、1株当たり1,000円の剰余金を配当
・決算期を12月31日から5月31日に変更したことにより、翌事業年度を同年6月1日から平成30年5月31日までとする旨記載した異動届出書を原処分庁に提出
平成29年7月、A社の代表取締役甲(Xの祖母)が死亡した。その相続により、Xは甲の全財産を相続した。財産には、A社の株式1,084株が含まれていた。
Xは、この相続に係る申告において、A社が評価通達178に定める評価上の区分が中会社に当たるとして、評価通達179の(2)(類似業種比準価額と純資産価額の併用方式)に基づき、株式の価額を約21億3,130万円(1株当たり約20万円)と評価した。
原処分庁は、評価通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められるとして、評価通達6を適用。時価純資産法による評価により、株式の価額を約40億6,380万円(1株当たり約37万円)と評価した上、令和5年5月付で、更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をした。
Xは処分を不服として、審査請求をした。

Xは、剰余金の配当は株主への利益還元、事業年度の変更は効率的な事務運営をそれぞれ目的としたものであって、租税負担の軽減を意図して行われたものではない等として、原処分は租税法上の一般原則としての平等原則に違反する等と主張した。

審判所は、A社が取引しているB銀行とXとの交渉履歴の資料等に基づき、以下の事実等を認定した。
(a) 平成29年3月1日、Xは、B銀行副支店長から、甲に相続が発生した場合の影響について指摘を受け、税理士法人Cをスポットで紹介する旨の申出を受けた。
(b) 5月12日、C税理士法人とB銀行は、X社の株式評価額は、現状33.9億円と高額であり、しかも「比準要素数1の会社」に該当するため、純資産価額方式によって評価せざるを得ないことを確認。このため、5月にわずかな配当金を出し、決算時期を5月31日に変更することで「比準要素数1の会社」の枠から外れ、類似業種比準方式を併用することができ、株価を10億円程度下げることが可能になるとして、Xに提案した。
(c) 同月17日、Xは、C税理士法人、B銀行支店長・副支店長と面談し、税理士が提案した相続対策スキームに係るメリットやリスクを十分理解した上で、三者が一体となって取り組むこと、及びその方向性を共有化していくことを確認し、これを承諾した。
これらの事実を踏まえ、審判所は、
(1) A社の事業年度の変更、及び決算期中の剰余金の配当によって、Xの納付すべき税額は約50%減少することから、Xの相続税の負担は著しく軽減されたといえる
(2) Xは、これらの行為が近い将来発生することが予想される甲の相続においてXの相続税の負担を減じさせるものであることを知り、かつ、これを期待して、臨時株主総会を開催し、甲らと意思を相通じて賛成の議決権を行使したと推認できるから、これら行為はXの租税負担の軽減をも意図して行われたものということができるとして、評価通達の定めによる画一的な評価を行うことが他の納税者とXとの間に看過し難い不均衡を生じさせ、実質的な租税負担の公平に反するというべきであり、合理的な理由があると認められるとして、原処分を適法と認定した。