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税理士向けニュース記事

注目判決・裁決例(令和6年4月11日裁決)

2025年01月24日
事業協同組合の持分は評価通達に基づき純資産価額で評価
令和6年4月11日裁決
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相続した事業協同組合の出資持分等の価額について、相続人が定款に定められた脱退組合員の払戻金を根拠に評価した上相続税の申告を行ったところ、評価通達の定めに基づき純資産価額で評価すべきとして否認された。審判所は、組合の定款によれば脱退組合員の払戻額は純資産価額を基に算定することとはされていないが、純資産価額に基づいて算定するように定款変更することはいつでも可能であるから、本件持分は、究極的には組合の純資産価額を体現したものといえるとして、その評価には評価通達の定めを適用することが合理的であると判断、相続人の主張を斥けた。
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A協同組合は、組合員が取り扱う水産物の共同購買や、組合員のための日用諸雑品の共同購買等を事業とする事業協同組合であり、その組合員は、出資持分、出資充当金・施設整備改修資金の貸付金債権等からなる各権利を有している。
組合員である甲は生前、組合が所有するビル内にて、鮮魚類の卸売業等を営んでいた。
平成29年4月、甲が死亡し、その相続が開始した。相続人である長男Xは、甲が保有していた同組合の各権利(出資1単元分)を、遺言により単独で相続した。
Xは、甲の相続に伴う相続税の申告において、組合員としての各権利をA協同組合の定款に定められている「脱退した際の払戻金」の金額にて評価した。
原処分庁は、令和5年2月付で、Xに対し、相続税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をした。
Xは、処分に不服があるとして審査請求をした。

Xは、A協同組合の定款に定める脱退組合員の払戻金を根拠とした評価額は、組合員の間でも適正価額として流通しており、この価額をもって評価すべきである等と主張した。
一方、原処分庁は、そもそも各権利は出資持分・出資充当金・施設整備改修資金に分けてそれぞれ評価すべきであり、このうち出資持分については、A協同組合が中小企業等協同組合に該当し、事業遂行により組合財産が蓄積していることから、評価通達196《企業組合等の出資の評価》に基づき評価通達185《純資産価額》の定めを準用して計算した純資産価額に基づき評価すべきである等と反論した。

審判所は、たとえ定款が組合を脱退した際の払戻金を定めているとしても、組合の純資産価額を基礎とした持分の価額が出資額を上回っていれば、その差額は組合の内部に留保された状態であり、最終的に解散して清算することになれば、純資産価額に基づく財産が分配されることになると指摘。
A協同組合の定款によれば、組合を脱退した際の持分の払戻額は、組合の純資産価額を基に算定することとはされていないものの、定款の変更は特別の議決によりいつでも可能であり、定款を変更して脱退の際の払戻額を純資産価額とすると改めれば、純資産価額に基づいて計算した払戻額が得られるのであるから、出資持分は究極的には組合の純資産価額を体現したものといえるため、その評価に当たっては、評価通達196の定めを適用することが合理的であると判断した。
また、脱退時の払戻金を根拠とした評価額は組合員間の適正価額として流通していたとのXの主張については、出資持分の譲渡にはA協同組合の承諾が必要であり、市場を通じた不特定多数の当事者間の自由な取引が行われるものではないことから、たとえ出資持分の価額が組合員間においてXが主張する通りに認識されていたとしても、これを出資持分の時価と認めることはできないとして一蹴。原処分を適法としてXの請求を斥けた。