算定されていない土地価額は固定資産評価基準に基づき推認
令和6年5月27日裁決
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固定資産税非課税の公共用地の跡地につき価額が算定されていない土地の登記に伴う登録免許税の課税標準の算定方法が争われた。法務局及び原処分庁は、同じ登記地目の「類似する土地」の評価額とする旨主張。審判所は、本件の土地と類似する土地は存在しないとして、利用状況等の実態から、路線価を基に算定するのが適切とした。
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X社は不動産取引を目的とする特例有限会社である。なお、X社の唯一の取締役Fの死亡に伴い、仮取締役として弁護士が選任されていた。
令和4年12月、X社は登記申請に先立ち、A市の土地3筆(公園用地として利用されていた跡地で、撤去すべきものがない空き地)に係る固定資産評価額証明情報請求書を地方法務局に提出し、回答された評価額(登記認定額)に基づき、収入印紙にて登録免許税を納付した。
なお、A市はこの各土地について、令和4年1月1日の時点で公共の用に供されている土地であるとして固定資産税を非課税とするなど、同年において課税台帳に登録する価額を算定していなかった。翌年、A市は令和5年1月1日時点の各土地について、地目を雑種地として価額を算定し、固定資産税・都市計画税納税通知書にてXに通知した。
令和5年7月、X社は、登録免許税の課税標準額に誤りがあり、過誤納が生じたとして、還付請求を行った。
令和5年8月、請求に対し原処分庁は、還付をすべき理由がない旨、通知処分をした。
X社は処分を不服として、審査請求に及んだ。
原処分庁は、地方法務局が回答した登記認定額は、令和4年1月1日の時点で各土地の価額がないことから登録免許税法施行令附則3項に基づき各土地に類似する土地の評価額を採用したものであり、適正である等と主張した。
X社は、原処分庁が採用した「類似する土地」は整形地であり、間口が狭く不整形地である各土地とは類似していない等と反論した。
審判所は、原処分庁が採用した「類似する土地」について、たしかに固定資産評価基準上の地区区分がともに「普通住宅」であるなど行政上の規制は同じであるものの、形状が大きく異なるほか地積・間口・奥行・利用状況・接道状況・路線価に違いがあるとして、類似していないと認定。また、そのほかにも各土地に「類似する土地」は存在しないとも認定した。
その上で、法令解釈によれば、類似する不動産が存在しない場合でも、特段の事情がない限り、固定資産評価基準に定める評価方法に従って決定した価額をもって不動産の価額と推認することができるとして、各土地の価額(時価)を検討。各土地の地目は雑種地であるものの、現況のまま宅地として使用可能と認められることから、路線価を基礎とする画地計算法により計算し、造成費を控除せず算出することが相当として、各土地の価額を計算したところ、原処分庁が主張する登記認定額を下回ったため、この部分で登録免許税の過誤納があったと認定。原処分庁の主張を斥けた。