台湾法人からの給与所得は外貨建て円払い取引に該当せず
令和6年7月3日裁決
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外国法人から支払われた給与所得の確定申告において、外貨で記載等された税額計算書に準じるか(外貨建て円払い取引として円換算すべきか)、日本円で記載等された所得明細に準じるか(円換算の必要はないのか)が争われた。審判所は、雇用契約の内容、明細作成の過程、給与送金の実態等から、給与は円建てで支給されたものと認定、原処分を取り消した。
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Xは、台湾に所在する外国法人F社と雇用契約を締結し、その顧問を務めていた。
F社からXへの給与支給に当たり、新台湾ドルで総支給額や源泉徴収税額等が記載された「台湾税額計算書」と、総支給額、台湾の所得税額、台湾の社会保険料、各種控除後の実際の送金額等が日本円で記載された「支払明細」が交付されていた。
Xは、各年の給与について、日本円で支払われたものとして所得を計算・申告した。
令和5年7月、原処分庁は金額等に誤りがあるとして、更正処分等の賦課決定処分をした。
Xは計算に誤りはないとして、処分の一部取消し等を求めて審査請求に及んだ。
原処分庁は、Xへの給与は「台湾税額計算書」にて新台湾ドルで記載されており、「台湾税額計算書」に記載された支給日に入金されていることから、いわゆる外貨建て円払い取引に該当するとして、Xの給与所得の収入金額は所得税基本通達57の3-2《外貨建取引の円換算》注書きの5に基づき、外貨建取引に準じた方法で総支給額を円換算した金額となる等と主張した。
これに対しXは、F社が日本円で支払うことを合意しているなどとして、円換算を行う必要はない等と反論した。
審判所は、
・雇用契約において、Xへの月給を「日本円○○○○円(税後実収入金額)+食事代○○○○新台湾ドル」と定められていること
・F社が総支給額、台湾の所得税・社会保険料などを日本円で算定した支払明細を作成し、その記載に従ってXの口座に日本円で送金していること
等から、Xへの給与は日本円で算定され、日本円で支払われたと認定。「台湾税額計算書」に記載の総支給額は、源泉所得税を台湾当局に納付するため、「所得明細」記載の総支給額を支給日の為替レートで新台湾ドルに換算したものにすぎず、いわば円建てというべきである等として、原処分庁の主張する、いわゆる外貨建て円払い取引には該当しないと指摘。あらためて「所得明細」に記載の総支給額を基に各年分の給与所得にまつわる納付すべき税額を計算し、更正処分の金額を下回った部分について、原処分を取り消した。