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税理士向けニュース記事

注目判決・裁決例(令和6年8月23日裁決)

2025年06月20日
契約者貸付けの利息は一時所得の計算上控除できず
令和6年8月23日裁決
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生命保険の解約に伴う解約返戻金を一時所得とするに当たり、保険契約に含まれる契約者貸付けを利用した借入金に係る利息が、所得税法34条2項の「その収入を得るために支出した金額」に含まれるかどうかが争われた。審判所は、利息が「その収入を得るために支出した金額」に含まれるためには、保険料の支払に借入金が充てられたことが必要であるが、本件では支払に充てられていない等として、利息は「その収入を得るために支出した金額」には含まれないとした。
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平成18年10月、A社は、被保険者を代表取締役のX、死亡保険金受取人をA社(後にXの子らに変更)とする生命保険契約を、保険会社B社との間で締結した。
平成23年8月、Xは約款に基づき、保険契約に係る契約者貸付けを申し込み、貸付可能限度額相当をB社から借り入れた。
令和2年3月、Xは、この保険契約を解約した。解約に伴いB社は、解約返戻金から借入金及びその利息を差し引いた金額を、Xに支払った。
同年のXの確定申告において、原処分庁は、解約返戻金に係る一時所得の計算上、総収入金額を解約返戻金の額とし、「その収入を得るために支出した金額」を支払保険料の額とするべきであるとして、更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をした。
Xは処分を不服とし、「その収入を得るために支出した金額」には借入金の利息も含まれるとして、再調査請求を経て審査請求に及んだ。

Xは、
・借入金は保険契約に付随する契約者貸付けによるものであり、契約は保険商品パッケージに含まれていること。
・借入金は、解約返戻金の原資となる積立金及び運用益を原資としており、いずれもXと保険会社間の債権債務関係にあるため、運用益と利息は相殺関係にあること。
・積立金等は保険会社に占有されており、借入金と利息は解約返戻金と相殺されることが事実上予定され、両者は不可分な関係にあること。
・保険料支払完了直後に貸付限度額まで借入れが行われており、その実態は積立金等の払戻しといえ、また、運用益と利息が同時期に発生しているため、利益が実現していたとはいえないこと。
・貸付けの利用によって保険契約が失効せず、その後も運用益が生じていること。
といった事情があることから、利息は、実態として収入が実現しているとはいい難いような部分に係る支出であり、所得税法34条2項に規定する「その収入を得るために支出した金額」に含まれる等と主張した。

一方、原処分庁は、
・借入金は、保険契約に基づき支払われた解約返戻金とは別個独立のものである。
・契約者貸付けは保険契約の解約・締結に必ずしも必要ではなく、利用は契約者の任意であり、借入金の使途にも制限がないこと等から、借入金は契約者貸付けにより生じた債務であり、その利息も保険契約の解約・締結とは直接の関連性を有しない。
等として、利息は「その収入を得るために支出した金額」に含まれない等と主張した。

審判所はまず、所得税法34条2項が、一時所得を、総収入金額から「その収入を得るために支出した金額」を控除して算出すると規定しているのは、一時所得に係る収入と支出を、収入を生じた行為又は原因ごとに個別対応的に計算すべきこと、そして収入を生じない行為や原因に係る支出は控除の対象とならないことを意味する旨を確認。
本件の場合、総収入金額は解約返戻金の額であり、これは保険契約に係る保険料の支払によって生じたものであること、他方で利息は借入金の使用に対する対価であり、契約者貸付けの利用はXの任意であって、解約返戻金を得るために利息の支払が不可避であったわけではないと指摘した。
したがって、利息を「その収入を得るために支出した金額」とするには、借入金が「収入を生じた行為又は原因」である保険契約に基づく保険料の支払に充てられていた必要があり、その範囲で個別対応的に判断されるべきであるが、Xは契約者貸付けを利用する前に保険料を完納しており、借入金が保険料の支払に充てられていた事実はないと認定。
よって、本件の利息は、一時所得の金額の計算上「その収入を得るために支出した金額」には含まれないと判断。審査請求には理由がないとして、これを棄却した。