消息不明の配偶者は相続時精算課税の権利義務を承継
令和6年10月7日裁決
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特定贈与者より先に受贈者が死亡し、受贈者の配偶者が消息不明であったケースで、消息不明の配偶者は相続時精算課税に伴う権利義務を承継するかが争われた。審判所は法律上、失踪宣告がなされない限りこの配偶者は生存していると推定される等として、権利義務を承継すると認定した。
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平成24年、甲(女性)は、その長女Gに土地及び家屋の2分の1の持分を贈与した。
Gはこれらにまつわる贈与税の申告に際し、相続時精算課税選択届出書を添付した。
平成29年8月頃、Gは死亡し、その相続が開始した。Gには平成4年に婚姻した配偶者Hがいたが、Hの消息は不明であった。
令和元年8月、甲及びGの養親Xは、Gの相続に係る相続放棄の申述を行い、家庭裁判所に受理された。
甲は家庭裁判所に対し、Hを不在者とする不在者の財産管理人選任の申立てをしていた。
令和2年3月、家庭裁判所は、不在者財産管理人を選任する審判をした。
令和2年5月、甲は死亡し、その相続が開始した。相続人はXのみである。
令和5年6月。Xは、甲の相続に係る相続税について原処分庁から申告漏れを指摘されたことを受け、修正申告をした。
原処分庁は、Hは相続時精算課税適用者であるGの相続人として相続時精算課税の適用に伴う権利義務を承継するにもかかわらず、Xの修正申告において、納付すべき相続税額の計算の基礎となる課税価格の合計額に贈与財産の価額が算入されていなかったとして、令和5年6月付で更正処分をした。
Xは処分を不服とし、再調査を経て審査請求に及んだ。
Xは、相続税法21条の9《相続時精算課税の選択》に規定する特定贈与者(甲)より先に死亡したGの配偶者であるHについて、
・生存しており、Gの相続人であることを、原処分庁は立証していない
・不在者財産管理人を選任する審判をした家庭裁判所は、Hが生存している事実を証明したわけではなく、真に相続人であることを判断しているわけではない
ことから、Gが有していた相続時精算課税の適用に伴う権利義務をHは承継せず、その贈与財産の価額は、甲の相続に係る相続税の課税価格に加算されないと主張した。
審判所は、HがGの相続人として相続時精算課税の適用に伴う権利義務を承継し、財産を特定贈与者から相続したとみなすには、Gの相続開始日において(1)Hが生存し、(2)Gの配偶者であったことを要することを確認。
民法が不在者の生存を推定してその者の財産管理制度を用意し、他方で生死不明者を死亡したものと確定する失踪宣告制度を用意していることに鑑みると、失踪宣告がなされない限り生存が推定されると解するのが相当であり、Hが失踪宣告を受けた事実はないことから、HはG(及び甲)の相続開始日において生存していたことが推定され、また、Gの除籍謄本には離婚の事実の記載がないことから、HはGの相続開始日においてその相続人であったといえることから、HはGの有していた相続時精算課税の適用に伴う権利義務を承継し、その贈与財産の価額は甲に係る相続税の課税価格に
加算されると認定。
あらためてXが納付すべき税額を計算したところ、原処分庁の更正処分の金額と同額であるとして、更正処分は適法であるとした。