構造計算適合性判定業務に係る収入は給与所得に該当
令和7年6月9日裁決
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建築基準法が定める判定業務の資格者である取締役が会社から受け取った収入に係る所得が、給与所得と事業所得のいずれに該当するかが争われた。審判所は、源泉徴収票等の内容や、時間的・空間的拘束の有無など働き方の態様等から、給与所得に該当するとした。
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Xは、A社の取締役であり、その肩書は「B部本部長」であるが、XとA社間で雇用契約が締結されていたかについては争いがあった。XはB部において、建築基準法6条の3《構造計算適合性判定》1項に規定の構造計算適合性判定員(要件を満たした一級建築士のみ登録できる資格の保有者)として、同判定に係る専門業務に従事していた。
A社は、Xに対して、「給与明細書」や「賞与明細書」と題する各明細書(平成30年~令和2年分)を交付していた。また、これらに基づき、各年分の給与所得の源泉徴収票を交付していた。
Xは、各源泉徴収票に基づき、収入に係る所得を給与所得として確定申告をした。
なお、各源泉徴収票には社会保険料の金額は記載されていなかった。
令和5年11月、Xは、これら3年分の収入は給与所得ではなく事業所得に係る収入である等として、各年分について更正の請求をした。
請求に対し原処分庁は、平成30年分と令和元年分については更正をすべき理由がない旨の通知処分をし、令和2年分については所得税等の還付金に相当する税額を増加させる更正処分をした。
Xはこの処分を不服として、審査請求に及んだ。
Xは、
(1) 建築士法24条《建築士事務所の管理》の制限により、雇用契約ではなく業務委託契約を締結しており、役員肩書はあっても経営には一切関与しておらず、取締役としての実態もなかった。
(2) A社からは建築士報酬として支払調書を交付されており、このことは収入が業務委託の対価であることを裏付けている。
(3) 代表取締役社長等の指揮命令を受けておらず、執務場所や退社時間についても自己の判断で決定していた。
(4) 自身で所有するパソコンで業務を行っており、社会保険料も自ら負担していた。
として、判定業務は個人事業の一環として行われたものであり、各収入に係る所得は所得税法27条《事業所得》1項に規定する事業所得に該当する等と主張した。
審判所はまず、XとA社の関係を精査。
・「本部長」は通常、従業員に付される肩書といえる。
・給与明細に「基本給」「手当」という支給名目が記載されており、実際に給与所得に係る収入金額として源泉徴収票の交付等をしている。
・Xが判定業務において作成した書類に、個人事業であることを明示した記載はない。
・Xが担当役員として判定業務に係る管理の責任と権限を有しており、実際に管理していたと認められるほか、取締役会に出席して取締役として議決権を行使していた。
といったことを根拠に、両者間で雇用契約及び委任契約が成立していたと認定した。
その上で審判所は、
・Xは原則として、B部にて業務規程に定める業務時間に判定業務を行っており、このような空間的・時間的な拘束を受けていたこと。
・事業所得に該当するためには、自己の計算と危険において独立して営まれている業務であることを要するところ、Xへの判定業務に係る支給金額は賞与を除き毎月定額であり、成果に応じた報酬面でのリスクをXは負担していないこと。
等から、Xは雇用契約に基づきA社の指揮命令下にあったといえ、各収入に係る所得はいずれも給与所得に該当すると認定。審査請求には理由がないとして、これを棄却した。