消費税の免税事業者を装った行為は所得税の隠蔽・仮装には当たらず
令和7年4月11日裁決
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消費税の課税事業者に該当しないよう、売上げを除外して1,000万円以下に調整していた個人事業者に対し、所得税と消費税の隠蔽・仮装が認められるとして重加算税が賦課された。事業者は単なる過少申告に過ぎないと主張。審判所は、事業者が真実の売上金額を記載したノートを税務署に提出していることなどから、所得税については隠蔽・仮装の事実は認められないが、消費税の免税事業者を装って1,000万円以下の申告をしたことは消費税に係る隠蔽・仮装と評価できるとして、課税処分を一部取り消した。
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清掃業を営む個人事業者のXは、平成30年9月に開業し、青色申告の承認を受けた。
Xは、売上げが1,000万円を超えると消費税の課税事業者になることから、適当な金額を減算して1,000万円以下となるよう調整した上、所得税の確定申告を行っていた。
原処分庁の調査担当職員は、令和5年11月に調査を実施。Xは真実の売上金額等が記載されたノートを提出した。
Xは同年12月、開業以来所得税の申告額が過少となっていたこと、また消費税の課税事業者に該当することから、所得税の修正申告及び消費税の期限後申告をした。原処分庁はこれを受けて、「隠蔽・仮装」の事実があったとして所得税、消費税の重加算税を賦課した。Xはこの処分を不服として審査請求に及んだ。
Xは、売上金額を1,000万円以下にするという目的にほどよく当てはまるように、適当な金額を減算して決算書を作成したが、これは過少申告にすぎないと指摘。調査においてもXは虚偽答弁をせずに、本件ノートなどの資料を秘匿することなく調査担当職員に提出するなど、真実の所得解明に積極的に協力しており、「当初から所得を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動があった」とはいえないと主張した。
これに対し原処分庁は、Xは各年分の事業に係る総収入金額が実際よりも少額になるよう各月の売上金額を調整して、実際の売上金額よりも過少に申告しており、X自身も、このような申告は納税額を少なくするためという意図的なものであった旨認めていると指摘。
また、各年の確定申告書及び所得税青色申告決算書に実際の売上金額よりも過少に記載していたことも踏まえると、このような記載は、所得税等の負担を免れることを目的とした意図的な集計違算といえると主張した。また、Xは各決算書を作成した後に、下書用決算書を破棄し、まさに隠蔽・仮装と評価すべき行為をしていると強調した。
審判所は、まず所得税については、以下のように過少申告行為とは別の隠蔽又は仮装と評価すべき行為が存在したとは認められないと判断し、原処分を取り消した。
(1) Xは真実の売上金額を把握していたにもかかわらず、納税額を少なくしたいという意図に基づいて、真実の売上金額よりも少額の売上金額を総収入金額として各確定申告書等を提出していたこと、及び自ら真実の売上金額を記載した下書用決算書を作成し、各決算書の完成後に下書用決算書を処分していた事実が認められる。しかしながら、下書用決算書には、本件ノートから集計した売上金額が記載されていたことから、下書用決算書の作成は、真実の売上金額を隠蔽又は仮装したものということはできない。
(2) Xが本件ノートを破棄せず保存し、調査において提出していることを踏まえると、下書用決算書の処分をもって隠蔽と評価することは困難であり、そのほか、Xが真実の売上金額の発覚を防ぐ意図に基づいて何らかの工作をしたことを認めるに足りる証拠はない。また、Xが資料の秘匿等をした事実は認められないほか、本件ノート以外に申告書に記載するための売上げ等を選別するための帳簿等を別途作成したり、架空取引の申告や他人名義の利用を行い、あたかもそれが真実であるかのように装ったりしたなどの行為も認められない。
(3) 原処分庁はXが所得税等の負担の軽減を継続的かつ積極的に意図し、下書用決算書を破棄するとともに、開業以降毎年3割から5割前後もの収入金額を脱漏した内容虚偽の確定申告書を継続して作成し提出していたことから、これらの行動は、「当初から所得を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動」に該当する旨主張するが、Xは調査担当職員の要請を受けて本件ノート等を提出するなど調査に協力しており、真実の売上金額を隠蔽又は仮装することを意図して調査担当職員に対して虚偽の説明をするなどの具体的な工作を行い、真実の所得金額を隠蔽する態度、行動をできる限り貫こうとしたと評価し得る事情は認められない。よって、Xが過少申告の意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした事実を認めるには足りないというべきである。
一方で消費税については、以下のように隠蔽・仮装に該当すると判断し、課税処分は適法とした。
(1) Xは、消費税の課税事業者になることを免れるため所得税等について過少申告したものの、これは所得税等の過少申告行為にすぎないことから、消費税等に関する隠蔽又は仮装の行為があったとはいえない旨主張するが、消費税法上の免税事業者に該当するか否かは、基準期間における課税売上高により決せられることから、Xの各年分の所得税等に係る申告における一連の行為が、消費税等における隠蔽又は仮装の行為に直ちに該当しないということはできない。
(2) Xは本件ノートを月ごとに集計していたことから、各年分の真実の売上金額がいずれも1,000万円を超えることを認識していたものと認められる。また、Xは売上金額が1,000万円を超えると消費税がかかることを知っており、消費税を納めなくて済むよう、各年分の本件事業に係る売上金額が900万円前後になるように、実際よりも少ない売上金額を記載して各確定申告書等を作成・提出していた。
このような行為は、国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実を隠蔽又は仮装し、各課税期間における消費税等の納税義務がないかのように装うものであることから、Xの所得税等に係る申告における一連の行為は、消費税等における隠蔽・仮装と評価すべき行為に該当すると認められる。