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注目判決・裁決例(東京地裁平成29年2月17日判決)

2018年04月10日
メルコ創業者一族の財産移転をめぐる裁判~外国政府への情報交換要請は可能か?
東京地裁平成29年2月17日判決
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パソコン周辺機器の総合メーカー・バッファローを傘下に持つメルコホールディングスの創業者一族による財産移転をめぐり、国税と創業者一族の間で争いが勃発。今回の判決は税そのものの争いではないが、外国政府への情報交換要請が可能かどうかが争点となっており、注目に値するケースだ。
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メルコホールディングスの創業者である甲1とその妻甲2は、2002年10月、オランダにメルコホールディングスの持株会社・A社を設立。さらに翌年5月、別組織としてA財団を設立し、A社全株式を預託した。
一方で甲1・2夫婦の子である甲3は2006年7月、全額出資によりB社(投資運用会社)をシンガポールで設立した。
その後、2009年9月に甲3はB社株式を甲1に全額譲渡するとともに、甲1・2夫婦はA財団の持つA社株式預託証書を甲3に、時価よりも著しく低い価額で譲渡した。
2012年、甲1・2夫婦の所得税の税務調査でこれらの取引が表面化。国税庁長官官房国際業務課長は、A社、B社に関する財務内容や定款等の情報提供を、日星租税条約及び日蘭租税条約に基づきシンガポール及びオランダ政府に要請した。一族と関係会社はこれに反発し、情報交換要請の取消しや得られた情報の不使用、さらに国家賠償を求めて提訴した。

争点は、情報交換要請の処分性や国家賠償法上の違法性だが、最大の問題は国税庁の要請が税務上関連のない「非関連情報」か否かという点だ。

原告側は、甲1・2夫婦がB社の株主でも役員でもない限り、夫婦の所得税に関連する情報が得られるはずはなく、こうした情報交換要請は「情報漁り」に該当し不当だと主張した。
これに対し東京地裁は、「租税条約における情報交換制度の趣旨・目的が、国内租税法を適正に執行するための必要な情報を交換し、自国の税務当局の調査権限が及ばない範囲での調査を相互に補完することにある」と指摘。税務職員は国内の場合に準じ、必要性に応じて情報交換要請を行うことができると解するのが相当とした。また、一族の資金や株式の移動、A社、B社の設立の真の趣旨・目的を解明する上で必要な情報であり、「非関連情報」には該当しない、と結論付けた。
これらの理由により、情報交換要請に違法性はなく、国家賠償請求権も成立しないと判決し、原告の訴えを斥けた。