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注目判決・裁決例(大阪高裁平成30年2月13日判決)

2018年05月01日
社会福祉法人を舞台にした巨額脱税スキーム、仲介者も共同正犯
大阪高裁平成30年2月13日判決
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社会福祉法人への相続財産の寄附を偽装して相続税約5億円の脱税を図った事件。一審の大阪地裁平成29年5月19日判決では、犯行グループと社会福祉法人の仲介役となった和歌山県議も有罪とされたが、県議は「脱税の事実を知らなかった」などとして即日控訴。今回、控訴審の大阪高裁判決が下され、改めて県議の有罪が示された。
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 東大阪市の不動産管理業Aは、兄である被相続人(平成25年11月死亡)の相続財産約10億5,000万円を単独相続したものの、相続財産を浪費してしまい、相続税の納税に困窮。税理士を含む複数の知人らに相続税の脱税を相談した。その結果、社会福祉法人に相続財産を寄附したうえ、その社会福祉法人を実質的に支配することで相続税の脱税を図るスキームが考案された。
犯行グループは、このスキームを受け入れてくれる社会福祉法人を探すべく、和歌山県議である被告人Xに相談を持ち掛けた。Xはこれを了承、和歌山県内の社会福祉法人K会を犯行グループに紹介した。
結果、脱税スキームが実行に移されたわけだが、これにより正当な相続税額約5億3,700万円に対して約4,700万円しか申告されず、差額の約4億9,000万円が脱税された。

平成27年11月、Aら7人は相続税法違反と偽造有印私文書行使の疑いで大阪地検特捜部に逮捕された。その後の公判でXを含む全員の有罪判決が下されたわけだが、Xはこの判決を不服として控訴。
Xは、(1)政治家として陳情や相談を日常的に受けている自分が違法性を疑わずに協力したことは不自然ではない、(2)犯行グループ構成員の供述は不自然で信用性が乏しいのに、これを前提としてXとの意思連絡や現金の授受等の事実を認定している、(3)Xは遺言書を偽造することや架空の債権を作出するとの説明を受けてはおらず、K会に実質的に財産を帰属させる意思がないことをXが知っていたとして脱税の故意を認定した原判決には論理の飛躍がある――などと主張した。

大阪高裁は、まず犯行グループ構成員の供述は不自然ではなく、信用性もあるとしたうえで、「遺言書の偽造や架空債権の計上に踏み込むまでもなく,これが相続税の脱税であることはかなり明瞭であるし,Xにはそれがはっきりと理解できたはず」と判断。Xは脱税について認識していたとして原判決を支持、Xの主張を斥けた。