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注目判決・裁決例(東京高裁平成29年7月20日判決)

2018年05月14日
法人が支払った保険料は一時所得の経費とは認められず
東京高裁平成29年7月20日判決
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法人が契約していた保険契約を役員が承継し、解約払戻金を受領。これに対し一時所得として課税が行われたが、法人が支払っていた保険料は一時所得の計算上、経費と認められるか否かが争われた。東京高裁は、一審・静岡地裁(平成29年3月9日判決)と同様、納税者の主張を斥けた。
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A社の代表取締役であるXは、A社が契約していた新逓増定期保険を承継し、その後解約。解約払戻金を受領したものの、その所得を申告していなかった。税務調査でこのことが発覚し、島田税務署長は受領した払戻金を一時所得と認定、決定処分を行った。
ところがXは、課税当局は一時所得について規定する所得税法34条2項の解釈を誤っているとして提訴した。

●所得税法34条(一時所得)2項
一時所得の金額は、その年中の一時所得に係る総収入金額からその収入を得るために支出した金額(その収入を生じた行為をするため、又はその収入を生じた原因の発生に伴い直接要した金額に限る。)の合計額を控除し、その残額から一時所得の特別控除額を控除した金額とする。

争点は、A社が支払済みの保険料が上記条文中の「その収入を得るために支出した金額」に該当するか否か。

Xは、所得税法34条2項では、「その収入を得るために支出した金額」=「一時所得に係る収入を得た個人が負担した金額に限る」というような限定は一切規定されていないと指摘。ゆえにA社が支払った保険料もX個人の一時所得計算上、控除することができると主張した。

これに対し東京高裁は、所得税法34条2項が「支出された」という文言ではなく「支出した」という文言を使用しているのは、その収入を得る主体(=X)が支出した金額のみ控除の対象とすることを表したものと解するのが自然であり、同項の文言を根拠として「その収入を得るために支出した金額」が一時所得に係る収入を得た個人が負担した金額に限定していないと解釈することはできないと、一審同様の判示をした。
また、Xはこの裁判所の見方に対し、「支出した」という片言隻句に特異な含意を発見することは不自然・不合理な解釈態度であるとも反論していたが、このような解釈は条文の文言に特異な含意を付け加えるものではなく、所得税法34条2項の趣旨・目的を踏まえたものであり、その内容は所得税法の課税方針に沿う適切なものであるから、不自然・不合理な解釈とはいえないと指摘。Xの請求を全面的に棄却した。
(参考判例)最高裁平成24年1月13日判決