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注目判決・裁決例(東京高裁平成30年4月25日判決)

2018年07月18日
平均功績倍率の1.5倍まで相当とした地裁判決を失当と判断
東京高裁平成30年4月25日判決
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役員退職給与の支給額をめぐり「不相当に高額」かどうかが争われていた事案で、一審の東京地裁判決では「平均功績倍率の1.5倍は相当な金額と認められる」として納税者の請求を一部認める判断を下した。ところが、控訴審の東京高裁判決では、地裁の判断を「失当」として取り消し、国側の主張を全面的に認めた。
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X社は、死亡退職した元代表取締役・甲への退職慰労金として「最終月額報酬240万円×勤続年数27年×功績倍率6.49」≒4億2,000万円を支給、損金の額に算入して確定申告した。ところが三条税務署長は、同業類似法人から抽出した平均功績倍率は「3.26」であり、「最終月額報酬240万円×勤続年数27年×平均功績倍率3.26」=2億1,124万8,000円を超える2億875万2,000円は不相当に高額であるとして否認、更正処分等を行った。

これを不服としてX社は提訴したところ、東京地裁平成29年10月13日判決は、「同業類似法人の平均功績倍率は、あくまでも通常存在する諸要素の差異や個々の特殊性を捨象して平準化した平均的な値にすぎず、少なくとも平均功績倍率の数にその半数を加えた数を超えない数の功績倍率であれば退職給与として相当であると認められる」とした。すなわち、「3.26×1.5=4.89」を功績倍率とし、「最終月額報酬240万円×勤続年数27年×功績倍率4.89」=3億1,687万2,000円までは甲に対する退職給与として相当とし、実際の支給額4億2,000万円との差額1億312万8,000円が不相当に高額な金額であると判断した。

これに対し、国側は判断を不服として控訴し、X社も損金算入を認められなかった部分を不服として附帯控訴した。

東京高裁はまず、役員退職給与の相当額について定めた法人税法70条2号に注目。

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(過大な役員給与の額)
第70条 (略)
 二 内国法人が各事業年度においてその退職した役員に対して支給した退職給与(…)の額が、当該役員のその内国法人の業務に従事した期間、その退職の事情、その内国法人と同種の事業を営む法人でその事業規模が類似するものの役員に対する退職給与の支給の状況等に照らし、その退職した役員に対する退職給与として相当であると認められる金額を超える場合におけるその超える部分の金額
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ここで同号が役員退職給与の相当額の算定要素として、(1)業務に従事した期間、(2)退職の事情、(3)同業類似法人の役員に対する退職給与の支給状況等――を列挙している趣旨は、退職役員又はその法人に存する個別事情のうち、(1)、(2)については退職役員の個別事情として顕著であり、かつ、役員退職給与の適正額の算定に当たって考慮することが合理的であると認められることから、これらを考慮すべき個別事情として例示されていると指摘。
その一方で、その他の「必ずしも個別事情としては顕著といい難い種々の事情」については、原則として(3)として把握するものとし、役員退職給与の相当額に反映されていると解釈を示した。

そうすると、同業類似法人の抽出が合理的に行われる限り、種々の事情については別途考慮して功労加算する必要はないというべきであると指摘。
甲のX社に対する功績について検討すると、X社の経理及び労務管理を担当して8億円の債務完済に何らかの貢献をしたことが認められるが、これに関する甲の具体的貢献の態様及び程度は必ずしも明らかではなく、平均功績倍率(3.26)によってもなお、同業類似法人の役員に対する退職給与の支給の状況として把握されたとはいい難いほどの極めて特殊な事情があったとまでは認められないと判断。
X社の請求を一部認容した東京地裁判決は「失当」として国側の敗訴部分を取り消した上、同部分についてX社の控訴部分を棄却するとともに、附帯控訴を棄却した。