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注目判決・裁決例(名古屋地裁平成29年10月19日判決)

2018年09月20日
ジョイント・テナンシーとして不動産を購入した場合のみなし贈与該当性
名古屋地裁平成29年10月19日判決
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米国内で不動産を購入したところ、現地法では「既婚者が財産を購入した場合、すべて配偶者との共有財産になる」との規定があったため、ジョイント・テナンシー(合有財産)の形式で登記をした。ところが、日本法ではそれが妻に対する「みなし贈与」と認定され、贈与税の課税を受けてしまった。外国法の規定によりやむを得ず合有とした場合も、贈与とみなされてしまうのだろうか?
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原告Xの夫Aは、自動車部品の製造販売会社の役員を務めており、日本のみならず米国、中国、シンガポール、インドネシアを行き来する生活を送っていた。
平成19年2月、Aは米国カリフォルニア州のコンドミニアム(以下「本件不動産」)を約227万米ドルで購入。カリフォルニア州では、家族法760条により「婚姻期間中に形成された資産は、原則夫婦共有財産とされる」旨の規定があるため、Aは本件不動産について妻であるXとのジョイント・テナンシーの形式で登記。ただし、購入代金は全額Aが負担していたため、Xは翌3月に駐日米国大使館において、本件不動産の取引に関しAに代理権を与える旨の特別委任状に署名している。
平成20年3月、Xは平成19年分の贈与税の申告を行ったが、その申告税額は3,000円程度であり、本件不動産については申告対象としなかった。
平成26年3月、昭和税務署長は、本件不動産をジョイント・テナンシーの形式で登記したことは、Xが対価を支払わずに本件不動産の持分2分の1を取得したことになり、相続税法9条の「みなし贈与」に該当するとして、購入金額約227万米ドルの2分の1(約113.5万米ドル)を当時の為替相場(1米ドル約117円)で換算した約1億3,300万円が申告漏れとなっているとして、贈与税額約6,400万円、過少申告加算税約960万円とする更正処分等を行った。

税務当局が贈与の根拠とする相続税法9条は、以下のような規定となっている。
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第9条 第5条から前条まで及び次節に規定する場合を除くほか、対価を支払わないで、又は著しく低い価額の対価で利益を受けた場合においては、当該利益を受けた時において、当該利益を受けた者が、当該利益を受けた時における当該利益の価額に相当する金額(対価の支払があった場合には、その価額を控除した金額)を当該利益を受けさせた者から贈与(当該行為が遺言によりなされた場合には、遺贈)により取得したものとみなす。
(以下略)
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Xは、カリフォルニア州家族法760条の規定により、本件不動産の購入に際して、ジョイント・テナンシーの形式で登記する以外の方法はなく、やむを得ずその方法によったと主張。加えて、特別委任状に署名したとおり、本件は購入名義の借用があったにすぎず、Xには贈与を受けるとの意思がなかったのであるから、みなし贈与とはならないとも主張した。

これに対し名古屋地裁は、Xは「ジョイント・テナンシーの形式にすることは法令上やむを得ない理由がある」と主張するが、カリフォルニア州家族法760条はいわゆる「任意規定」であり、ジョイント・テナンシーの形式で所有権を取得しなければならないという趣旨ではないと指摘。また、同法1500条は、夫婦間で制定法とは異なる合意をする余地も認めていることからすれば、760条によって特定の共同所有形態が強制されていると解することはできないと認定した。
そうすると、Xは対価を支払うことなく本件不動産の2分の1相当の経済的利益を得たというべきであるから、みなし贈与があったと認められると判断。Xの請求をすべて棄却した。