土地譲渡損失を営業権として減価償却していた納税者が敗訴
東京地裁平成30年1月25日判決
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バブル期に、ゴルフ練習場建設のために購入した土地を、バブル崩壊後に二束三文で売却し、その譲渡損失を無形固定資産である営業権として減価償却していたことが発覚。税務署は損金算入を否認したが、納税者はこれを不服として提訴。裁判所の判断も、当然のことながら納税者側の全面敗訴となった。
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不動産業を営むX社は、バブル期である昭和62年ごろからゴルフ練習場の建設を計画。平成元年から平成7年にかけて複数の地権者から土地を購入したものの、バブル崩壊の影響で景気が後退し、事業が立ち行かなくなったため、平成12年1月に土地をA社に売却した。なお、土地の取得価額は借入金の利息なども含め約13億円であったが、売却価額はわずかに3,000万円だった。
X社は、平成13年10月期の決算において、「土地営業権原価」約12億6,000万円を同社の固定資産に計上。うち約6億6,000万円は「ゴルフ練習場開発に係る土地計画法上の同意の取得・協議に要した費用及び資金調達に係る利息」であり、減価償却ができる「営業権」(無形固定資産)であるとして、平成15年10月期以降、任意の金額を損金に計上してきた。
神田税務署は、この「土地営業権原価」につき、「X社が過去に取得した土地を平成12年10月期に譲渡したことにより生じた譲渡損失に相当する金額」であり、減価償却し得ないものとして、平成21年10月期から平成24年10月期までの4年間にわたる損金算入を否認。法人税と過少申告加算税あわせて計約6,500万円を追徴した。なお、この4年間、X社は所得金額、納付税額いずれも0円として申告していた。
X社はこの処分を不服として、提訴に及んだものだ。
裁判でX社は、本件ゴルフ練習場用地はいまだ引き渡されておらず、譲渡損失が発生していないことを、損金算入ができることの理由の一つとして主張した。というのも、土地の売買契約書において、本件土地の売買代金を3,000万円とすることの他に、X社は以後もゴルフ練習場としての開発に共同で参画し、本許可取得後にA社は相当の金額をX社に支払うものとすることという条項があるが、X社はいまだその支払を受けていないから、土地の引渡しは完了していない、という理屈だ。
これに対し東京地裁は、X社は平成12年1月にA社と土地の売買契約を締結し、同日に3,000万円が支払われていること、同年2月に土地の所有権移転登記等の手続が行われていることから、売買代金3,000万円については、平成12年10月期に所得の実現があったと認められると指摘。
他方、本件土地の取得価額を構成する約12億6,000万円は平成12年10月期の損金に算入すべき譲渡原価になり、収入金額が譲渡原価を下回るため譲渡損失が発生し、その損失は平成12年10月期の損金に算入すべきものであると判断した。
また、X社は「土地営業権原価」を法人税法施行令13条8号ヲに規定する「営業権」に当たるものとして減価償却しているが、「土地営業権原価」の中に営業権に当たると認める余地のあるものは含まれていないと一蹴。
X社の主張にはいずれも理由がないとして、国側の処分を適法とする判決を下した。