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注目判決・裁決例(東京地裁平成30年4月24日判決)

2019年01月16日
妻名義の有価証券はすべて相続財産と判断
東京地裁平成30年4月24日判決
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税理士業を営んでいた被相続人の妻名義の有価証券が相続財産に含まれるか否かをめぐり、その税理士事務所を承継した長女の税理士と税務当局間で争いとなった。長女は、母名義の有価証券の購入原資には、自分が給与として受けていたお金が含まれているはずだとして、その45%を相続財産に含めて申告したが、当局は「すべて相続財産に含めるべき」として否認。裁判所の判断は、長女にとって厳しい内容となった。
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被相続人甲は、昭和21年から税務署職員として勤務し、昭和55年に退官して税理士事務所を開業した。甲は開業当初から妻の乙を青色事業専従者として届け出ており、乙は開業から6年程度業務に従事した。
また、甲の長女である原告Xは、昭和58年に父の税理士事務所に入所、昭和60年には税理士資格を取得して、共に事務所を経営してきた。なお、Xも昭和58年から甲の青色事業専従者となり、当初月15万円から、最終的に月50万円の給与を受け取っていた。
Xは甲事務所の職員として給与を受けていたほかに、自らの顧客からは直接報酬を受け取っていた。生活費としてはこれらの報酬のみで充分であったため、甲からの給与については甲に管理・運用を任せている状態であった。甲はXのみならず乙等の家族名義でいくつもの預金口座を開設し、頻繁かつ複雑な資金の出し入れをしながら有価証券や生命保険の購入資金として利用していた。

甲の死去に伴い、Xは税理士として甲の相続税の申告を平成23年9月に行った。家には乙名義の有価証券等が約1億5,000万円あったが、Xは、当然乙にその購入資金はなく、むしろ甲に委ねていたX自身の預貯金が使用されたと考え、その40%(約6,000万円)を相続財産に含めて申告。
その後、平成26年2月には、相続財産に含める乙名義有価証券等を45%(約7,000万円)に修正申告した。
ところが税務署は、「乙名義有価証券等はそのすべてが相続財産に当たる」として平成26年7月に更正処分を行ってきたため、これを不服とするXは提訴に及んだものだ。

裁判でXは、乙名義有価証券等の全部について、その購入の原資となる資産を甲が有していたということは困難であり、X自身の預貯金も含め、甲以外の者からの資金流入がなければ合理的な説明が困難であると主張した。
これに対して東京地裁は、次のように説示した。
(1) 甲は、自らの事務所で営んでいた税理士業の収入につき、家族名義を利用して資産の管理及び運用を行ってきたものであり、乙名義の各証券口座もその中で開設されたものであるところ、本件乙名義有価証券等の購入の原資として、乙名義の各証券口座又は乙名義預金口座に、甲名義預金口座及び甲の資産と推認される乙名義預金口座からその大半を占める資金が流入しているほか、乙名義の保険金や配当金の収入についても、その相当部分が甲の資産により形成されたものと推認できることから、購入の原資となった金員については、その全部が甲に帰属するものであったと推認することができるものである。
(2) 他方、X名義預金口座からは、本件乙名義有価証券等の購入の原資となるような資金流入は認められず、また、原告が甲から受けた給与及びその運用により得られた収益については、既にX名義の資産として形成されているものと認められ、このほかに、本件乙名義有価証券等の購入の原資となるような資産をXが有していたとは認め難い。
以上により、乙名義有価証券等は、その全部が甲に帰属する、つまり相続財産に含まれるものと認めるのが相当であるとして、Xの請求を棄却した。