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注目判決・裁決例(東京地裁平成30年3月13日判決)

2019年03月27日
マンション管理組合は人格なき社団か民法上の組合か
東京地裁平成30年3月13日判決
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マンションの共用部分を貸し付けることで収益を得ていた管理組合が人格のない社団等に該当するか、民法上の組合に該当するかが争われた。課税庁は人格のない社団等に該当し、所得は組合に帰属すると、組合側は民法上の組合に該当し、各区分所有者に所得が帰属すると主張したが、東京地裁は「人格のない社団等に該当する」として組合側の主張を一蹴。この2つの組織形態は、どのように異なるのだろうか。
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マンションの区分所有者全員によって構成されるXマンション管理組合は、従来から共用部分を貸し付けることで収益を上げていた。具体的には、主に屋上の共用部分に携帯電話用通信施設や移動通信用基地局設備等を設置して事業者に貸し付けたり、電柱を設置するための敷地を賃貸することで、その使用料、電気料及び賃料等を収受していた。
これらの賃貸収入は、X組合の理事長名義の普通預金口座に振り込まれ、X組合の管理費会計における「雑収入」の科目に該当するものとして経理処理されていた。
X組合は平成26年8月、金沢税務署長に対し、複数年度にわたる法人税の申告書等を提出したものの、同年11月に上記賃貸収入に係る所得については法人税の納付義務を負わないとして更正の請求等を行った。ところが、税務署はこれを認めなかったため、裁判に発展した。

主要な争点は、X組合が法人税法2条8号に規定する「人格のない社団等」に該当するか否か。課税庁は、X組合が人格のない社団等に該当するため、X組合を導管とする構成員課税(パススルー課税)が適用される余地はないと主張した。
これに対しX組合は「民法上の組合に該当するため、課税はない」と反論。「人格のない社団等」は民事実体法における「権利能力のない社団」と同義と解されているが、権利能力のない社団の成立要件は、(1)団体としての組織を備えており、(2)そこには多数決の原則が行われ、(3)構成員の変更にもかかわらず団体そのものが存続し、(4)その組織によって代表の方法、総会の運営、財産の管理その他団体としての主要な点が確定しているものとされていることを確認。
さらに、権利能力のない社団の成立要件としては、(5)その財産は各構成員に直接帰属するのではなく、団体自体に帰属し、(6)債務についても、会費のほか規約によって負担した以上の責任を負わないことも追加すべきと指摘。そうすると、X組合は権利能力のない社団には該当しないと主張した。

これについて東京地裁は、X組合が上記(1)~(4)の要件をすべて備えているため、権利能力のない社団であり、法人税法上の人格のない社団等に該当すると指摘した上で、X組合が主張する上記(5)については、権利能力のない社団が法人格を有するものでない以上、その社団の財産が団体自体に法的に帰属することを要件とすることは背理であり、明らかに理由がないと判示、課税庁の処分は適法とした。