信託契約を経由した土地の譲渡は優良住宅地特例の適用不可
大阪地裁平成30年3月9日判決
---------------------------------------------------------
土地の信託契約を締結後、受託法人が宅地の開発許可を受けて造成を行った。その後、信託受益権を他社に譲渡、優良住宅地の特例を適用しようとしたところ、所轄税務署から待ったがかかった。「土地を譲り受けた法人が開発許可を受けたわけではない」ため、同特例の適用を否認したのだ。納税者は「実質的に開発許可を受けた法人と評価できれば、特例を適用できる」と主張したが、裁判所は国側の主張に軍配を上げた。
---------------------------------------------------------
Xは、本件土地を他の者との共有の形で所有していた。平成24年8月、Xらは本件受託会社・A社との間で、本件土地の管理及び処分を目的として、Xらを委託者兼受益者、A社を受託者とする信託契約を締結した。
平成25年4月、A社は本件土地の所在するP市の市長に対し、開発事業者をA社、開発区域を本件土地とする開発事業事前協議申請書を提出した。
同年5月、XらはB社との間で、本件信託の受益権を約2億円で譲渡する契約を締結。翌月、B社は代金を支払い、Xは4分の1の約5,000万円を受け取った。
A社は同月、P市との間で開発事業者をA社とする開発事業に関する協定を締結。開発許可を受けた。そして同年12月、P市は開発行為に関する工事の検査済み証を交付するとともに、工事完了の公告を行った。
Xは平成26年3月、本件受益権の譲渡について、租税特別措置法31条の2第1項の「優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例」を適用できるものとして平成25年分の確定申告を行ったところ、枚方税務署長から、本件受益権の譲渡は優良住宅地特例に規定する土地等の譲渡には該当しないとして更正処分等を受けた。
裁判では、本件受益権の譲渡が優良住宅地特例所定の土地等の譲渡に該当するか否かが争点となった。
国側は、「B社は自ら開発許可を受けておらず、優良住宅地特例所定の『開発許可を受けて』宅地の造成を行う法人には当たらない」とした上で、本件においてP市長から開発許可を受けたのはA社であると指摘。仮にA社がB社の指図に基づいて開発許可を申請したこと等の事情があったとしても、信託契約の法的性質に照らし、開発許可を受けたという法律効果がB社に及ぶものではないと主張した。
これに対しXは、優良住宅地特例の規定は実質的に解釈されるべきであり、実質的に開発許可を受けたものと評価することができる法人であれば、「開発許可を受けて」宅地の造成を行う法人に当たると解すべきである、と反論した。
大阪地裁は、「優良住宅地等のための譲渡」を規定する租税特別措置法31条の2第2項のうち、本件で争いとなっている13号の規定である「開発許可を受けて宅地の造成を行う法人に対する土地等の譲渡」との文言に照らすと、「土地等の譲渡」の相手方(譲受人)たる法人自身が開発許可を受けて宅地の造成を行うことを求めていると解するのが自然、と指摘。受益権の譲渡が優良住宅地特例の規定所定の「開発許可を受けて住宅建設の用に供される一団の宅地の造成を行う法人に対する土地の譲渡」に該当するのは、当該受益権の譲渡を受けた法人自身が名宛人として当該土地に係る開発許可を受けて造成を行った場合に限られると判断した。
よって、本件土地につき開発許可を受けたのはA社であって、本件受益権の譲渡を受けたB社が名宛人として開発許可を受けて受けたものということはできず、優良住宅地の特例の適用を受けることはできないとして、Xの請求を棄却した。