「機械装置」か「器具備品」かが争われた事例
大阪地裁平成30年3月14日判決
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パン工場で使用する冷蔵庫を「器具及び備品」として減価償却していたところ、「機械及び装置に該当する」として否認を受けた。大阪地裁は、複数の機器が有機的に結合することにより1つの設備を構成していれば、それは「機械及び装置」として総合的に償却すべきと指摘。本件の冷蔵庫は「機械及び装置」に該当するとして、国側の主張を認めた。
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原告X社はパンの製造・販売等を業としており、複数のブランドで全国展開している企業だ。パンの製造は、全国6カ所の工場と、店舗に併設された工房(インストア工房)で行っている。
X社は、パンの製造工程で用いる冷蔵庫・冷凍庫について、「器具及び備品」に該当するとして耐用年数6年で減価償却費を計算し、確定申告していたところ、平成26年7月、神戸税務署長から「当該冷蔵庫等は「機械及び装置」に該当し、耐用年数は10年である」として更正処分等を受けた。X社はこの処分を不服とし、提訴に至った。
「機械及び装置」か「器具及び備品」かの争点に関し、国側は次のとおり主張した。
(1) 耐用年数省令が「機械及び装置」について総合償却方式を採用しているのは、機械設備は最初から最後の工程に至るまで有機的に牽連結合して活動し、細目ごとの区分は必ずしも明瞭でないためである。各機器が製品製造等の一連の生産工程の中で供用され、それぞれの果たす機能により製造設備等の一部を構成している場合は、「機械及び装置」に該当するというべきである。
(2) パン等の製造においては、生地の温度、発酵状態、湿度等の管理調整が非常に重要であり、本件冷蔵庫等はX社のパン等製造の生産工程の中で供用され、それぞれの果たす機能により、他の機器とともに、パン等製造設備の一部を構成するものと認められ、「機械及び装置」に該当するというべきである。
これに対し、X社は以下のように反論した。
(1) 耐用年数省令の別表第一においては「器具及び備品」に該当する具体的な資産が個別に例示され、別表第二においては「機械及び装置」として設備の種類が抽象的に挙げられているにすぎないから、納税者としては、「器具及び備品」に該当するとして例示されている資産については「機械及び装置」ではなく、「器具及び備品」に該当するものと判断するのは当然である。
(2) そうすると、本件冷蔵庫等は別表第一の「器具及び備品」中、「1 家具、電気機器、ガス機器及び家庭用品」のうち「電気冷蔵庫、電気洗濯機その他これに類する電気又はガス機器」に該当することは明らかである。
(3) また、X社店舗のカフェスペースでも同一の冷蔵庫等が使われているが、これは「器具及び備品」に該当するとされている。設置場所によって減価償却の取扱いに差異を設けるのは、減価償却資産制度の本旨に反する。
大阪地裁は、以下のように判断し、国側の処分を適法と認めた。
(A) 減価償却資産のうち、「製品の製造等を目的として、1つの機器が単体で、又は2つ以上の機器が有機的に結合することにより1つの設備を構成する有形資産」(=機械及び装置)は、設備を構成することによりはじめて法人の収益を生み出すものとなるという特質を有する点において、他の減価償却資産と異なる。そのため、このような資産の取得金額の費用化をそれぞれの資産ごとに行うのではなく、当該設備について行うのが減価償却資産制度の趣旨に照らして合理的であるということができる。
(B) X社のパン等製造のための各機器は、大量のパン等を反復継続的に製造する工程において、それぞれ工程の一部を分担し、ある機器による作業成果を前提に次の工程を担当する機器による作業が行われており、本件冷蔵庫等は生地の発酵の調節及び低温発酵、温度管理が必要な原材料及び完成品の保管を行っており、これらの機器による作業成果を前提として反復継続的な製造工程が実施されていること、また各機器が互いに近接した場所に効率的に配置されていることなどから、本件冷蔵庫等を含む各機器は、有機的に結合し一体となって大量のパン等を製造しているものということができる。よって、「機械及び装置」に該当すると認められる。