お問い合わせ

  • 〒101-0032
  • 東京都千代田区岩本町1-2-19
  • 株式会社日本法令 ZJS会員係
  • 会員直通:03(6858)6965
  • FAX番号:03(6858)6968
お電話での受付時間
平日 9:00~12:00
  13:00~17:30

お問い合わせはこちら

SSL グローバルサインのサイトシール

このシステムは、SSL(Secure Socket Layer) 技術を使用しています。ご入力いただいたお客様情報はSSL暗号化通信により保護されております。SSL詳細は上のセキュアシールをクリックして確認することができます。

Article

注目判決・裁決例(最高裁令和元年8月27日判決)

2019年09月04日
婚外子による遺産分割請求の基礎財産は積極財産のみと初判断
最高裁令和元年8月27日判決
---------------------------------------------------------
被相続人の婚外子が裁判で認知を勝ち取り、晴れて他の相続人に遺産の分割を要求。しかし、被相続人は多額の債務を抱えていたため、相続人は既に相続財産からその債務を返済した後だった。婚外子は、プラスの財産のみを算定基礎にして分割をすべきと主張。他の相続人は債務をマイナスした残りを基礎とすべきと反論した。最高裁は、「積極財産の価額を基礎として分割すべき」と判断、婚外子側に軍配を上げた。
---------------------------------------------------------
被相続人甲は平成20年に死亡。相続人は妻乙と長男Xの2名で、乙は預貯金の大部分を相続したものの、甲が生前に多額の借金をしていたため、その弁済を前提としての相続だった。
乙とXによる遺産分割の終了後、甲の子であると主張する女性Yが、認知を求める裁判を提訴し、平成24年にYが甲の婚外子であると認知する旨の判決が確定した。YはXに対し、民法910条に基づく遺産分割として、約3,000万円の支払を求めて提訴した。
---------------------------------------------------------
(相続の開始後に認知された者の価額の支払請求権)
第910条 相続の開始後認知によって相続人となった者が遺産の分割を請求しようとする場合において、他の共同相続人が既にその分割その他の処分をしたときは、価額のみによる支払の請求権を有する。
---------------------------------------------------------
争点は、乙とXの遺産分割協議において相続債務の負担に関する合意がされ、債務の大部分は乙が弁済している本件では、民法910条に基づきYに対して支払われるべき算定の基礎となる遺産の価額は、積極財産のみの価額とするのか、積極財産の価額から消極財産の価額を控除したものとするのか。
X側は、甲の債務の弁済により、現金・預貯金はほとんど取得しておらず、Yの請求には応じられないと主張したが、原審高裁判決は「積極財産の価額を算定基礎財産とすべき」と断じた。

最高裁は、まず、民法910条の規定について「相続の開始後に認知された者が遺産の分割を請求しようとする場合において、他の共同相続人が既にその分割その他の処分をしていたときには、当該分割等の効力を維持しつつ認知された者に価額の支払請求を認めることによって、他の共同相続人と認知された者との利害の調整を図るもの」と整理。
その上で、同条に基づき支払われるべき価額は、分割等の対象とされた遺産の価額を基礎として算定するのが、当事者間の衡平の観点から相当であり、遺産の分割は遺産のうち積極財産のみを対象とするものであって、消極財産である相続債務は、認知された者を含む各共同相続人に当然に承継され、遺産の分割の対象とならないものであると指摘した。
したがって、相続の開始後認知によって相続人となった者が遺産分割を請求する場合、他の共同相続人が既に遺産分割をしていたときは、民法910条に基づき支払われるべき価額の算定基礎財産は積極財産の価額であると解するのが相当と判断した。