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注目判決・裁決例(東京高裁令和元年5月29日判決)

2019年09月11日
利益剰余金・資本剰余金双方原資の配当は別個の配当と判断
東京高裁令和元年5月29日判決
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海外子会社からの配当が利益剰余金と資本剰余金の双方を原資とする場合、その配当は1個の「資本配当」か、「資本配当」と「利益配当」のそれぞれ別個独立した配当かが争われた事案で、東京高裁は、「本件配当は単一のもの」という国側の主張を否定し、「別個独立のもの」と結論付けた。
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被控訴人のX社は、平成24年11月12日、米国子会社A社から約6億4,000万ドルの配当を受け取り、翌々日の14日に「利益剰余金のみを原資とする剰余金の配当:5億4,000万ドル(432.5億円)」、「資本剰余金のみを原資とする剰余金の配当:1億ドル(79.5億円)」と会計処理を行った(金額は概算)。
剰余金の配当について、法人税法23条(受取配当等の益金不算入)1項1号の規定は、「資本剰余金の額の減少に伴うものを除く」と規定し、24条(配当等の額とみなす金額)1項3号(本事案当時。現4号)は「資本剰余金の額の減少に伴うものに限る」と規定している。
つまりX社は、資本剰余金を原資とする剰余金の配当と、利益剰余金を原資とする剰余金の配当に区分した上で、上記のような処理を行った。
X社は、上記処理のまま平成25年3月期決算・申告を行ったが、京橋税務署長は、「本件の剰余金の配当は、それぞれの効力発生日が同じであることなどから、その全額が法人税法24条1項3号の資本の払戻しに該当する」として更正処分等を行った。

X社は、これを不服として提訴に及んだところ、一審・東京地裁平成29年12月6日判決は、(1)「利益剰余金、資本剰余金の双方が原資の配当は、資本配当(資本の払戻し)」として国側の主張を認めた上で、(2)「株式又は出資に対応する部分の金額」の計算方法を定める法人税法施行令23条1項3号(現4号)は、利益剰余金を原資とする剰余金の配当の額が「株式又は出資に対応する部分の金額」に含まれることとなる場合には、法の委任の範囲を逸脱した違法なものとして無効であると解するのが相当として、国側の処分を取り消した。

これに対し今回の東京高裁では、次のように判示して、上記一審判決の(1)部分を取り消し、本件配当は「利益配当と資本配当という別個の配当」と断じた。
(a) 国側は、本件配当の実行は一つの株主総会における一つの決議に基づくものと主張するが、そもそも資本配当に係る決議書と利益配当に係る決議書とは別個のものである以上、私法上は別個の決議がされたと評価される。
(b) 国側は、本件配当は決議及び効力発生日が同日であり、X社に一体的に流入したものであることを理由に、このような配当は同時(一体的)に行われた一つの剰余金の配当であると主張するが、本件資本配当はA社において減少させた資本を原資とするものであり、本件利益配当はA社の留保利益を原資とするものであることは明らかであって、国側が指摘する決議日・効力発生日の同一性等の事情は形式的なものにすぎない。

さらに、上記一審判決の(2)部分については、施行令23条1項3号の定めが、資本剰余金及び利益剰余金の双方を原資とする剰余金の配当への適用に当たり、当該剰余金の配当により減少した資本剰余金の額を超える「払戻し等の直前の払戻等対応資本金額等」が算出される結果となる限りにおいて法人税法の委任の範囲を逸脱したものとして無効であるとして、一審の判断を維持した。