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注目判決・裁決例(大阪地裁平成31年3月12日判決)

2019年09月18日
架空経費の計上は故意による脱税と判断
大阪地裁平成31年3月12日判決
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架空経費の計上等により、5年間にわたり法人税・消費税等計約2億1,000万円を脱税した会社の経営者が、架空広告宣伝費と指摘された3,000万円については記憶がないなどとして、「ほ脱の故意を有していなかった」と争っていた事案で、大阪地裁は被告人が振替伝票の内容を確認せずに銀行印を押印したとは考え難く、従業員による改ざんの痕跡もないとして、「ほ脱の故意を有していた」ものと認めた。
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大阪市内で納骨堂を運営するX社の代表取締役甲は、取引先業者に対する架空の業務委託費を計上するなどの手口で、平成22年9月1日から平成27年8月31日までの5事業年度の法人税約1億7,000万円、同5課税期間の消費税及び地方消費税約4,000万円(不正還付金額を含む)を脱税したとして、平成29年10月に逮捕された。
甲は大筋で罪を認めたものの、平成25年8月期にA社に対して3,000万円の架空広告宣伝費を計上したとする件については、「記憶がなく、営業部長Kや経理担当社員Cが共謀して支払った可能性もあり、甲はほ脱の故意を有していなかった」として認めなかった。

これに対し大阪地裁は、次のような事実が認められることから、甲の主張は採用できないと断じた。
(1) この広告宣伝費はテレビ番組の舞台セットの制作費であり、「『24時間TV』美術セット」、「企画制作・運営管理費」名目で、3,150万円から振込手数料525円を控除した3,149万9,475円をA社に振り込む旨の振替伝票が存在。振替伝票の「承認印」欄には、甲名義の銀行印による印影が顕出されている。この銀行印は被告人しか暗証番号を知らない金庫に保管されていたなどの管理状況等に照らせば、甲が自ら銀行印を押印したことによって顕出されたと認められる。
(2) 甲は,テレビ番組の舞台セットを実際に制作したのはL社であり、その金額は300万円程度であると認識していたこと等に照らせば、遅くとも甲が振替伝票に押印した時までには、A社に対する架空経費計上を認識していたと認められる。
(3) 振替伝票及びこれに対応する振込受付書等を見てもCが数字を付け足したり書きかえたりするなどの改ざんをして甲の決裁金額よりも過大な資金を移動させたような跡はうかがわれず、Cが被告人の認識と異なる内容の振替伝票及びその根拠資料を添付するなどの方法を用いて、甲に押印させたとは考え難い。
(4) Kの証言によれば、平成25年8月15日、上記3,150万円をA社に振り込んだ後、A社はうち3,000万円をKに渡し、Kはその日のうちに喫茶店で甲に2,400万円を渡したとされる。
甲の弁護人は、同日には多忙な大供養会が開催されているため、その合間を縫って喫茶店に赴くことは考え難いと主張するが、全証拠を精査しても、甲及びKが同日に喫茶店等で現金の授受をすることが不可能であったといえるような事情はなく、K証言の信用性を失わせるほどの事情とはいえない。

以上のことから、甲は3,000万円の架空広告宣伝費の計上に関してほ脱の故意を有していたものと認められるとした上で、X社に対し罰金2,000万円、甲に対し懲役2年(執行猶予3年)及び罰金3,000万円の刑が言い渡された。