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注目判決・裁決例(東京地裁平成30年6月29日判決)

2019年10月16日
「隠ぺい・仮装」ではなくても「偽りその他不正の行為」に該当
東京地裁平成30年6月29日判決
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放射線技師を営む納税者が、事業所得に係る所得税・消費税を申告していなかった。税務調査でこのことが発覚後、納税者は修正申告をしたが、税務署は7年分の所得税・消費税について重加算税を賦課。審査請求をしたところ、重加算税の賦課要件は充足していないとして取り消されたものの、「偽りその他不正の行為」はあったと判断された。納税者はさらに裁判に訴えたが、東京地裁の判断も「偽りその他不正の行為」はあったとするものとなった。
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原告Xは、診療放射線技師として医療機関に勤務して給与等を受けていたほか、自らが個人事業主として医療機関から診療放射線技師業務を受託し、技士を派遣して業務委託料の支払を受け、スタッフに報酬を支給する事業を営んでいた。
Xは、上記給与所得については適正に申告していたものの、事業所得については所得税・消費税の申告をしていなかった。葛飾税務署の税務調査でこのことが発覚し、Xは税務署の指摘に従い、平成27年2月、平成19年から25年までの7年分の所得税の修正申告、消費税の期限後申告をした。
税務署は翌3月、平成19年から25年までの所得税・消費税の重加算税の賦課決定処分を行った。
Xはこれを不服として審査請求をしたところ、重加算税の賦課要件である「隠ぺい・仮装」の行為は認められないとして、重加算税については取り消された。
http://www.kfs.go.jp/service/JP/104/02/index.html

しかし、裁決では「偽りその他不正の行為」はあったとされたことから、Xはこれをなお不服として、「5年の除斥期間経過後である平成19年、20年の賦課決定処分は違法」として提訴した。

争点は、Xが平成19年、20年課税期間の消費税等につき「偽りその他不正の行為」により税額を免れたといえるか。
Xは、消費税等の無申告について、「所得税とは異なる源泉徴収税の金額を確定するものという理解をしていたため、給与についてのみ確定申告をしていた」として、「真実の所得等を秘匿し、それが課税の対象となることを回避する意思」はなく、しかも、「積極的な所得等の秘匿工作及びそれと同視し得る不作為」も行っていないと主張した。

これに対し東京地裁は、まず、「所得秘匿工作」とは、虚偽の収支計算書の提出や二重帳簿の作成といった積極的に税務当局を欺く行為にとどまらず、売上を正確に記載した帳簿を作成している場合に売上金の一部を仮名又は借名の預金口座に入金保管することなど、税務当局による所得の把握を困難にさせる一切の行為を指すと解される、と指摘した。
その上で、Xに「偽りその他不正の行為」があったかについては、以下のように判示した。
(1) Xが平成19年、20年の所得税の確定申告において事業所得を除外した確定申告を行っていたことは、所得税に係る「偽りその他不正の行為」に当たるとともに、同時に、税務当局に対し、平成19年、20年の課税期間においてXが事業を行っていたことを秘匿し、消費税等の課税対象となるべき資産の譲渡等があったことの把握を困難にさせる行為であって、「秘匿工作」にも当たるものと認めるのが相当である。
(2) Xは、消費税等についての行為は単なる不申告であり「偽りその他不正の行為」ではないと主張するが、Xによる所得税の過少申告が消費税等との関係における資産の譲渡等の秘匿工作に当たるから、Xの主張は採用できない。
(3) また、Xは税金に関する知識がなく、消費税の課税事業者であることを認識していなかったと主張するが、個人事業主が事業所得につき所得税を申告する義務があることはおよそ社会人としての常識の部類に属する事柄であり、事業所得について申告する必要があったことはXも十分に認識していたか、認識できたはずである。
以上のことから、Xは租税をほ脱する意図の下に、消費税等に係る資産の譲渡等の秘匿工作を伴う不申告を行ったものと認めるのが相当と判断、Xの請求を棄却した。