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注目判決・裁決例(東京地裁平成30年8月30日判決)

2019年10月31日
理事長に対する現金給付は賞与に該当と判断
東京地裁平成30年8月30日判決
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理事長に対する多額の貸付金を有していた社団法人で、当該貸付金の存在が公益法人制度改革に伴う一般社団法人への移行認可の障害になるとの指摘を受けたため、貸付金と同額の金銭を理事長に支給し、返済原資とした。この取引自体が理事長に対する賞与に該当するとして否認された事案で、東京地裁は、課税庁の処分を適法と判断した。
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社団法人であるXは、平成23年6月に税務調査を受け、使途不明金約1億5,000万円の指摘を受けた。このためX社団は、このうち約5,150万円を理事長・甲に対する貸付金として計上するとともに、金銭消費貸借契約書を取り交わした。また、この貸付金の返済原資としては、甲の退職時に払う退職慰労金をもって充てることが確認された(返済期限は平成31年5月31日)。
その後X社団は、いわゆる公益法人制度改革に伴い、平成25年5月期までの事業年度中に一般社団法人への移行認可を受けることを予定したが、顧問税理士から、上記甲に対する貸付金が財務上の健全性を損なうものとして認可の障害となるおそれがあるとの指摘を受けた。そこでX社団は、平成24年5月期までに甲から貸付金の返済を受けることとした。
X社団はまず、平成24年5月29日に、甲に対し約5,300万円を振込送金し、同額の「退職給付資産」を計上した。翌30日、甲はX社団に対し、同額を振込送金した。
5/29
(借)退職給付資産5,300万円/
(貸)普通預金5,300万円
5/30
(借)普通預金5,300万円/
(貸)貸付金5,150万円
受取利息150万円
芝税務署長は平成27年7月、この取引について、甲に対する現金支給が甲の給与等(賞与)に該当するとして、源泉所得税約2,000万円の納税告知処分をするとともに、「退職給付資産」が実際には存在しないにもかかわらず、あたかも実在するかのような経理処理をしたなどとして、重加算税約700万円の賦課決定処分を行った。

東京地裁は、「本件現金支給の法的性質及び給与所得該当性」について、本件現金支給が可能であったのは、甲がX社団の理事長に就任して約40年の長期間にわたりその職務を行ったため、退職金規程に定める退職慰労金の額が1億2,000万円を超えていたことによるものであることに加え、本件現金支給は、甲に支払われる予定の退職金の一部を退職前に支払ったものと認められ、甲の在任中にX社団から臨時に受けた賞与に当たるといえるから、給与所得に該当すると判断。原告の請求を棄却した。