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注目判決・裁決例(東京地裁平成30年9月25日判決)

2019年11月11日
債務の消滅による経済的利益は一時所得に該当せず
東京地裁平成30年9月25日判決
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子の借金の一部を父親が代位弁済したケースで、その求償権を相続した者がその一部の返済を請求したところ、「既に消滅時効が完成している」として返済の必要なしと認められた。税務署はこれを「債務の消滅による経済的利益の享受」ととらえ、一時所得に該当するとして更正処分等を行ったものの、裁判所の判断は「一時所得は発生していない」として納税者の主張を認めた。
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原告Xは、平成12年12月28日時点で、約5億円の借入金債務を負っていたところ、連帯保証人である父親・甲が、同日付で借入金のうち2億円を代位弁済した。なお、Xは甲と前妻との間の子であり、甲には他に後妻との間の子が複数人存在する。
甲は、平成16年5月に遺言書を作成し、上記2億円のXに対する債権(本件貸金債権)を相続人・乙(Xの弟)に相続させる旨の遺言を残し、その後死亡した。
本件貸金債権を相続により取得した乙は、平成24年10月、債権のうち200万円の支払を求める訴えを横浜地裁に提起したところ、平成25年2月1日の口頭弁論でXは、甲が2億円を貸し付けた事実を否認するとともに、乙に対し、本件貸金債権について消滅時効を援用
する旨の意思表示をし、横浜地裁はこれを認めた。

藤沢税務署長は、平成27年6月、Xの平成25年分の所得税について、本件貸金債権が消滅したことにより2億円の経済的利益を享受しており、これは一時所得に該当するとして、総所得金額を約1億円、納付税額を約3,900万円とする更正処分をするとともに、約600
万円の過少申告加算税の賦課決定処分を行った。
Xはこれを不服として、審査請求を経て訴えを提起した。

争点は、甲が2億円を支払ったことにより、Xに対する求償権(本件求償権)を取得したか否か、及びXによる時効援用の意思表示により本件求償権が消滅したかである。
これについて東京地裁は以下のように判示し、Xの請求を認容、課税処分を取り消した。
(1) 本件貸金債権は、甲とXの間の金銭消費貸借契約によって生じる債権であり、第三者弁済をした者が取得し得る債務者に対する求償権とは発生原因を異にする別個の債権である。
(2) それゆえ、仮に甲が本件求償権を取得していたとしても、本件貸金債権と本件求償債権は別個の債権であり、Xが本件貸金債権に係る消滅時効の援用の意思表示をしたからといって、本件求償権について消滅時効を援用する旨の意思表示をした事実は認められない。
(3) そうすると、仮に甲が本件求償債権等を取得し、乙がこれを相続していたとしても、本件時効援用の意思表示によって本件求償債権が消滅したものとは認められないから、Xが本件求償権の消滅によって2億円の経済的利益を享受したものとは認められない。