みなし解散後に2期連続期限後申告は青色取消し該当か
東京地裁平成30年10月23日判決
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法務局によるいわゆる職権解散後、2事業年度にわたり期限後申告をした法人が、青色申告の取消処分を受けた。解散後も従前の決算日で申告していたことが原因だが、税務署からの通知を受け取ることができなかった法人は、自社に責任はなく、税務署の裁量権の逸脱だとして訴えた。裁判所は、原告の請求を認めず、処分は適法と判断した。
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原告X社(3月決算法人)は、平成3年以降、登記事項に変更がなかったため、平成27年1月20日に会社法472条1項により解散したものとみなされ、解散登記がなされた。
会社法494条1項では、みなし解散をした株式会社は、各清算事務年度(解散した日の翌日又はその後毎年その日に応当する日から始まる各1年の期間)に係る貸借対照表、事務報告、附属明細書を作成しなければならない旨規定している。X社の場合、平成27年1月21日~平成28年1月20日が解散後の事業年度となる。
ところがX社は、平成27年6月1日、平成27年3月31日を事業年度終了の日とする法人税の確定申告書を日野税務署に提出した。
そこで税務署は同年10月26日、「みなし解散法人の申告についてのお知らせ」と題する書面を送付したが、「あて所に尋ねあたりません」との理由で返送された。税務署は重ねて11月27日、「申告書の効力のない旨のお知らせ」を送付したが、これも宛先不明で返送された。
さらに平成28年2月、税務署は平成28年1月20日を事業年度終了の日とする法人税の確定申告書用紙を送付したが、これも宛先不明で返送された。
X社は平成28年6月1日、平成28年3月31日を事業年度終了の日とする法人税の確定申告書を提出してきたため、税務署は、確定申告書の控えを送付するための返信用封筒に、「みなし解散法人の申告についてのお知らせ」とメモを封入して送付したところ、X社はこれを受領した。
その後税務署は、X社が解散後の事業年度において確定申告書を期限内に提出していないとして、青色申告取消通知書を交付。X社はこれを不服として提訴した。
争点は、税務署に裁量権の逸脱又は濫用があり、本件処分が違法か否か。
X社は、税務署からの「お知らせ」を受け取れなかったことから、みなし解散によって事業年度終了の日が1月20日になったことを知り得ず、自社にはその責任はないから、期限までに申告書を提出することは不可能であったとし、したがって本件処分は違法と主張した。
東京地裁は、以下のとおり判断し、X社の請求を棄却した。
(1) X社は平成27年1月20日にみなし解散しているから、平成27年1月期の申告期限は平成27年3月20日であり、平成28年1月期の申告期限は平成28年3月22日となる。
(2) 国税庁事務運営指針「法人の青色申告の承認の取消しについて」の4では、2事業年度連続して期限内に申告書の提出がない場合に青色申告の承認取消しを行う旨規定されており、本件はこの場合に該当するから、本件処分は適法である。
(3) 各種「お知らせ」がX社に到達しなかったのは、本店所在地宛の郵便が到達しない状態にあったにもかかわらず、X社が税務署に対して、相当の期間、本店所在地以外の連絡先を通知していなかったためであることからすれば、税務署がその裁量権を逸脱し又は濫用したとは認められない。