金取引を利用した消費税還付策で納税者敗訴
東京地裁平成31年3月14日判決
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金地金の取引を利用した消費税還付策を行った納税者に対し、更正処分等が行われた。建物の取得に係る「課税仕入れを行った日がいつか」が主要争点となったが、裁判所は国側の主張を全面的に認め、納税者敗訴となった。
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不動産賃貸業等を営むX社の前身であるP社は、平成24年6月12日、金地金200kgを86万3,350円で購入し、翌13日に85万7,400円で売却。その後P社は新設分割によりX社(11月30日決算)を設立した上で解散した。X社は新設分割法人であるため、消費税の納税義務
の有無については、消費税法施行令23条1項の規定により、P社の平成24年6月1日~30日までの事業年度の課税売上高(上記85万7,400円)を1年換算した金額が1,000万円を超えることとなる結果、X社は平成25年11月5日~30日の課税期間(本件課税期間)において、課税事業者となった。
X社は平成25年11月15日、Aから土地建物を代金9億7,000万円(消費税等相当額を含む)で購入する契約を締結。同日付で未払金勘定を相手科目として、本件不動産を土地、建物及び建物附属設備勘定に資産計上した。
さらに12月2日、X社はAに対し売買代金の全額を支払い、本件不動産の登記を行った。
X社は本件課税期間の消費税等について、建物の取得対価、仲介手数料、司法書士報酬の額の合計約8億円に係る消費税を控除対象仕入税額に算入の上、確定申告した。
それから1年半後の平成27年5月、税務署はX社に対し、本件課税期間の消費税の更正処分を、7月に過少申告加算税の賦課決定処分を行ったため、X社はこれを不服として提訴に及んだ。
本事案の主要争点は、「本件建物の取得に係る『課税仕入れを行った日』は本件課税期間に属する日であるか否か」。X社は「譲渡契約の効力発生日である11月15日」と、国側は「所有権がAからX社に移転した12月2日」であると、それぞれ主張した。
これに対し東京地裁は、本件売買契約について、(1)売買代金全額の支払いと所有権移転登記・引渡しが同時履行となっていること、(2)本件不動産から発生する賃料等の収益に関しては
引渡日をもって区分されていること、(3)Aは不動産の引渡しと同時に賃貸借契約書や鍵一式等を引き渡すとされていること、(4)所有権移転と同時に賃貸借契約に関わる一切の地位を承継するものとすることなどが合意されている事実を認定。
さらに、X社とAは、12月2日に所有権移転登記手続をし、X社の使用収益が可能となったことからすると、本件建物に係る売買代金請求権の権利が確定した時点は12月2日であると認めるのが相当と指摘。よって「課税仕入れを行った日」は12月2日であるとした。
その余の争点についてもすべてX社の主張を斥け、更正処分等は適法と判断した。