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注目判決・裁決例(最高裁令和元年12月24日判決)

2020年01月23日
合資会社の無限責任社員は金員支払債務を負うか
最高裁令和元年12月24日判決
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遺言により財産のすべてを相続した長男に対し、長女が遺留分減殺請求訴訟を提起。その際、被相続人が無限責任社員であった合資会社が債務超過状態にあったため、超過債務の支払義務を遺留分侵害額の算定上考慮するか否かが争われた。原審・名古屋高裁は「債務は考慮しなくてもよい」との判断を下したが、長男側の上告を受けた最高裁は、「無限責任社員は超過債務を支払わなければならないと解するのが相当」と結論付け、高裁に差し戻した。
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被相続人甲は、合資会社A社の無限責任社員であったが、平成23年11月、後見開始の審判を受けたことにより、A社を退社した。この時、A社は債務超過状態にあった。
その後甲は「所有する一切の財産を長男Yに相続させる」旨の遺言書を残して死去。この遺言により長女Xは遺留分を侵害されたとして、Yに対し、不動産の遺留分減殺を原因とする持分移転登記手続、解約済みの預貯金及び現金並びに不動産の一部についてYが甲の死後に受領した賃料に係る不当利得の返還等を求めて提訴した。この際、Xの遺留分の侵害額の算定に関し、A社の無限責任社員であった甲が、退社によりA社に対して金員支払債務を負うか否かが争われた。
これについて原審・名古屋高裁は、合資会社が債務超過の状態にある場合であっても、無限責任社員は、退社により当該会社に対して金員支払債務を負うことはないと判断して、甲のA社に対する金員支払債務を考慮することなくXの遺留分の侵害額を算定し、Xの請求を一部認容した。

Xの上告を受けた最高裁は、まず「無限責任社員が合資会社を退社した場合には、退社の時における当該会社の財産の状況に従って当該社員と当該会社との間の計算がされ、その結果、当該社員が負担すべき損失の額が当該社員の出資の価額を下回るときには,当該社員は、その持分の払戻しを受けることができる」と指摘。
その一方で、「上記計算がされた結果、当該社員が負担すべき損失の額が当該社員の出資の価額を超えるときには、定款に別段の定めがあるなどの特段の事情のない限り、当該社員は、当該会社に対してその超過額を支払わなければならないと解するのが相当である」とした。
このように解することが,合資会社の設立及び存続のために無限責任社員の存在が必要とされていること、各社員の出資の価額に応じた割合等により損益を各社員に分配するものとされていることなどの合資会社の制度の仕組みに沿い、合資会社の社員間の公平にもかなうというべきである、と明らかにした。
本件については、無限責任社員である甲がA社を退社した当時、A社は債務超過の状態にあったというのであるから、退社時における計算がされた結果、甲が負担すべき損失の額が甲の出資の価額を超える場合には、上記特段の事情のない限り、甲はA社に対してその超過額の支払債務を負うことになる、と判示。よって、超過額の支払債務はXの遺留分侵害額の算定上、考慮しなければならず、このことについてさらに審理を尽くさせるため、名古屋高裁に差し戻した。