調整池の固定資産税評価で納税者勝訴
最高裁平成31年4月9日判決
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ショッピングセンターに隣接する土地を調整池用地として貸し付けていた納税者が、調整池用地は「宅地」ではなく「池沼」に該当すると主張して審査の申出をしたが、この申出は棄却された。納税者はこれを不服として提訴に及んだものの、名古屋高裁は納税者の主張を認めなかった。しかし、最高裁は納税者の主張に理があるとして、原審・名古屋高裁判決を破棄、差し戻した。
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上告人Xは、三重県志摩市でショッピングセンターを運営するS社に対し、店舗に隣接する土地を調整池用地として貸し付けていた。
三重県では、開発面積1ha以上かつ供水調整容量500立方メートル以上の開発行為については、河川等の改修、調整池の設置又は排水ポンプの設置が義務付けられているため、S社は本件土地をXから借り受け、供水調整のための調整池を設けたものだ。
本件土地は、土地A、土地Bの2つに分かれていた。土地Aは実際に調整池が敷設され、面積の80%に常時水が溜まっている状態。一方、土地Bは調整池としての機能を有する平地であるが、平時はショッピングセンター従業員の駐車場として使用されている。
志摩市長は、土地A、Bの平成27年1月1日における価格について、本件各土地をいずれも「宅地」と認定した上、奥行価格補正率0.8、不整形地補正率0.87を乗じ、土地Aについては常時水が溜まっていることから雑種地における減額補正に準じた補正率0.3を乗じて表点数を付設。土地Aは約108万円、土地Bは約480万円と決定し、土地課税台帳に登録した。
これに対しXは、本件各土地の地目はいずれも「池沼」と認定されるべきと主張して、志摩市固定資産評価審査委員会に審査の申出をしたが、同委員会は申出を棄却する旨の決定をした。Xはこの決定を不服として裁判に及んだ。
原審の名古屋高裁(平成30年3月23日判決)は、ショッピングセンターの開発行為については調整池の設置が義務付けられていることから、本件各土地は宅地であるショッピングセンターの敷地を維持するために必要な土地と認められると指摘。本件各土地の地目をいずれも宅地とした決定は違法ではないと判断した。
これに対し最高裁は、本件各土地を調整池の用に供することはショッピングセンターの開発に係る許可条件となっているのであるが、一般的に調整池の機能は開発の対象となる地区への降水を一時的に貯留して下流域の洪水を防止することにあると考えられるから、本件各土地が直ちに、ショッピングセンターの敷地を維持し、又はその効用を果たすために必要な土地であると評価することはできないと判断。
したがって、許可条件になっていることを理由に、土地Aの面積の80%以上に常時水が溜まっていることなど、本件各土地の現況等について十分に考慮することなく、宅地として算出された登録価格が本件各土地の価格を上回るものではないとした原審の判断には、固定資産の評価に関する法令の解釈適用を誤った違法があるとして、原判決を破棄、差し戻した。