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注目判決・裁決例(東京地裁平成31年3月15日判決)

2020年04月09日
資産の譲渡等の日は引渡日と判断
東京地裁平成31年3月15日判決
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賃貸建物の売買契約を6月28日に、代金の支払い及び所有権移転登記を7月31日に行ったケースで、消費税における「資産の譲渡等」を行ったのはどちらの日かが争いになった。納税者は契約日である6月28日と、課税庁は引渡日である7月31日と主張したが、東京地裁は「資産の譲渡等の日は引渡しの時点」であり、課税仕入れがあったのは7月31日と認められるとして、納税者の主張を斥けた。
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X社は、不動産の賃貸借等の業務を事業目的として、平成25年6月10日、A社からの新設分割により設立された。決算日は6月30日としたため、消費税の第1期の課税期間は6月10日~6月30日となる(X社は課税事業者に該当する)。
X社は、平成25年6月28日、代表取締役甲及び取締役乙、丙から土地を7,280万円で、甲から建物(賃貸物件)を約7,108万円で買い受ける旨の売買契約を締結した。
つづいて同年7月31日、X社は甲、乙、丙に土地及び建物の売買代金の全額を支払い、所有権の移転登記がされた。また、土地建物の固定資産税の負担割合は、7月31日を基準に按分計算を行うとともに、同日にJ社との間で建物の管理委託契約を締結した。
X社は、本件土地建物を平成25年6月期に取得したものとして、本件建物の課税仕入れに係る支払対価の額約7,147万円を控除対象仕入税額の計算に含め、消費税の確定申告を行った。しかし、西税務署長は、平成28年3月、本件土地建物の取得は平成25年7月31日(平成26年6月期)であるとして否認、更正処分等を行った。X社はこれを不服として提訴に及んだ。

主要な争点は、「本件資産の譲受けに係る『課税仕入れを行った日』は、本件課税期間(平成25年6月期)に属する日であるか否か」。
X社は、「資産の譲渡等」がいつ行われたかの判断基準等については、所得税における収入金額や法人税における益金と同様に、権利確定主義を基準として判断すべきであるから、対価を収受すべき権利が確定的に発生した時点(6月28日)をもって資産の譲渡等が行われたと解すべきと主張。
これに対し課税庁は、「資産の譲渡等」の日とは、その資産につき、その同一性を保持しつつ、他人に移転することにより譲渡人の下で生じた付加価値が移転した時をいうものと解すべきであり、具体的には、当該資産が譲渡人から譲受人に引き渡された日をいうと解すべきと反論した。

東京地裁は、原告の主張する所得税及び法人税における権利確定主義を基準とすべきという主張については、一定の理解を示したものの、権利確定主義による収入ないし収益の実現の時期が課税時期と直結しているのは、まさに当該収入ないし収益によって構成される個人ないし法人の所得がそれぞれ所得税ないし法人税の課税対象となっているからであり、消費税の課税対象が「資産の譲渡等」という取引行為とされ、その対価の額が課税標準とされるにとどまる消費税法の場合とは前提を異にすると指摘。したがって、消費税の課税標準としての対価の額の算定に当たり、権利確定主義の考え方を導入する余地はあり得るとしても、それによる対価収受の実現の時期が直ちに当該資産の譲渡等の時期となるものではないとし、X社の主張は採用できないとした。
さらに、事実関係からすれば、X社と甲は本件建物の引渡日(7月31日)をもって所有権を移転する旨合意していたと認めるのが相当であり、X社が甲から本件建物に係る権利(所有権)を取得した日、つまり本件建物の課税仕入れがあった日は平成25年7月31日であると認められると判断。X社の請求を棄却した。