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注目判決・裁決例(東京地裁令和元年6月27日判決)

2020年05月29日
完全支配関係下の合併にも事業継続要件は必要(TPR事件/下)
東京地裁令和元年6月27日判決
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100%子会社を吸収合併し、子会社の未処理欠損金額を損金算入した会社に対し、課税庁は法人税法132条の2の行為計算否認規定を用いて否認。この合併が節税のみを目的とした不自然、不合理なものかが争われた。東京地裁は、課税庁側の主張を全面的に認め、この合併を「法人税の負担を負担に減少させるもの」と結論付けた。
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自動車部品等の製造・販売を営むX社は、平成14年2月、非鉄金属製品製造・販売業の旧C社の発行済株式総数の3分の2を取得。その後、平成15年3月には、X社は旧C社の全株式を保有することになった。
それから6年半経過後の平成21年9月末時点で、旧C社は業績不振のため、約1億1,400万円の債務超過に陥っていた。同年12月、X社では旧C社を吸収合併する計画が審議され、平成22年3月1日付で吸収合併した。
この際、X社は新たに新C社を設立し、旧C社の従業員を転籍させた上で吸収合併。そして旧C社から引き継いだ資産を新C社に譲渡・賃貸した。
その後X社は、法人税法57条(青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越し)2項に基づき、旧C社の未処理欠損金をX社の前7年内事業年度において生じた欠損金額とみなして、平成22年3月期に約6億1,700万円、平成23年3月期に約5億5,900万円を損金の額に算入の上、法人税の確定申告を行った。しかし、課税庁は法人税法132条の2の一般的否認規定を用いてこれを否認。各期の更正処分、過少申告加算税の賦課決定処分を行ったため、X社はこれを不服として争訟に発展した。

本裁判の第二の争点は、「本件合併が法人税法132条の2にいう「法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」に当たるか否か(第一の争点については前号を参照)。
課税庁側はまず、法人税法57条2項に規定する適格合併に係る被合併法人(子会社)の未処理欠損金額の合併法人(親会社)への引継ぎは、被合併法人が適格合併前に行っていた事業が合併法人において継続して営まれるという「事業の継続性」が前提として求められるとした上で、本件合併における新C社の設立時、その商号や登記簿上の目的、役員、本店所在地等は旧C社と同一であったことから、X社が旧C社の資産・負債を実質的には承継しておらず、未処理欠損金額のみを引き継いだものであるから、実態とはかい離した形式を作出するものだと主張。
これに対しX社は、完全支配関係下の適格合併では、「移転資産に対する支配の継続」及び「事業の継続」は求められないとして、課税庁側の主張には理由がないと反論。また、本件合併により旧C社や新C社の損益構造及びビジネスモデルの変更、管理体制の強化という実質的な変更が生じており、実態を伴うものであると強調した。

東京地裁は、「完全支配関係下における合併にも事業継続要件が求められるか否か」について、適格合併には(a)企業グループ内の適格合併と、(b)共同事業を営むための適格合併があり、いずれについても移転資産の対価として株式等以外の資産の交付がされないことが要件とされていると指摘。また、(b)については共同事業要件が必要とされ、(a)についても、完全支配関係がない場合には、いわゆる従業員引継要件と事業継続要件が必要とされているとした。
これらの規定に加え、組織再編税制の基本的な考え方の「移転資産等に対する支配が継続している場合」としては、被合併法人において当該移転資産等を用いて営んできた事業が合併法人に移転し、その事業が合併後に合併法人において引き続き営まれることが想定されているから、組織再編税制は、組織再編成による資産の移転を個別の資産の売買取引と区別するために、資産の移転が独立した事業単位で行われること及び組織再編成後も移転した事業が継続することを想定しているものと解されると説示。
そうするとX社の主張はこれに反しており、採用することができないと判断した。
また、旧C社の営んでいた事業がほぼ変化のないまま新C社に引き継がれ、X社は旧C社の有していた未処理欠損金額のみを同社から引き継いだに等しいといえるとして、本件合併は事業の移転及び継続という実質を備えているとはいえず、適格合併において通常想定されていない手順や方法に基づくもので、かつ、実態とはかい離した形式を作出するものと認め、全面的に課税庁側の主張を支持。課税処分は適法なものと判断した。