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注目判決・裁決例(東京地裁令和元年5月30日判決)

2020年06月29日
内縁の妻に対する給与を代表者の役員給与と認定
東京地裁令和元年5月30日判決
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代表者の内縁の妻を社員とし、毎月給与を支払っていた。ところが会社の主要な業務は一切行っておらず、仕事場の掃除や買い物、夜食の準備やマッサージなどといった主婦が行う程度の仕事だったため、税務署は内縁の妻への給与を代表者に対する役員給与と認定。しかも「事実を仮装して経理することにより支給したもの」として更正処分等をした。東京地裁も課税庁の判断を全面的に支持した。
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建設用機械の設計等を業とするX社の代表者甲は、昭和61年頃、通っていたスナックの娘であったAと知り合い、交際を開始した。甲には配偶者がいたが、すでに別居状態。平成3年には家を新築し、Aと同居するようになった。
平成9年頃、Aが勤務していた会社が倒産したことから、甲はAをX社で働かせることにした。
Aは毎日X社の事務所に出勤し、掃除や電話番、郵便物の受取り等の事務を行っていたが、甲自身は事務所にはほとんど出社していなかったため、Aは時間を持て余してしまう状態に。平成10年頃から甲は自宅で業務を行うようになったため、Aも事務所に出勤することはなくなった。
その後Aは、専ら自宅で活動することとなったが、勤務時間は具体的に定められておらず、出退勤も管理されていなかった。日常の家事の他は甲から指示された買い物や銀行における支払手続、振込用紙の取得等を行っていたほか、夜間は甲の要望に応じてお茶を入れたり、夜食を作ったり、マッサージをするなどしていた。
Aには一貫して手取り40万円の給与が支払われていたが、茂原税務署長は平成27年6月、Aに対する給与は甲の役員給与に該当するとして、平成20年9月期~平成26年9月期までの法人税の更正処分、源泉所得税の納税告知処分及び重加算税の賦課決定処分を行った。X社はこれを不服として提訴に及んだ。

裁判で課税庁側は、Aに対する支給額は、AのX社における従業員としての労務の対価とは認められず、その実質は甲との私的な関係に基づいて、甲の日常生活の域を出ない範囲の労務を提供していたことについて、各月40万円という定額の金銭を支給していたものであり、甲が個人的に負担すべき費用をX社が負担していたものと指摘。また、Aが10年以上にわたりX社の事務所に出勤せず、日常生活の域を超えない範囲の労務の提供をしていたことを知りながら出勤簿を作成していたことから、あたかもAがX社の従業員として勤務していたかのように事実を仮装し、存在しない課税要件事実を存在するように見せかけたと主張した。
これに対しX社は、甲が自宅で業務を行うようになってからのAの業務は、日中は仕事場の整理、清掃、買い物、費用支払い等の業務を行い、夕方以降は甲が気持ちよく仕事ができるよう、甲の指示があるまで待機し、お茶出し、夜食の提供、肩もみ等を行っていたものであり、毎月40万円の給与は甲が個人的に負担すべき費用ではないと反論した。

東京地裁は、上記Aの活動内容について、家庭の主婦が夫に頼まれて行う事務の範囲にとどまる軽微な内容にすぎず、甲とAの関係に照らせば、自宅で仕事をする夫を支える内縁の妻としての行為であるというほかなく、これをA自身がX社の従業員として行った業務と評価することはできないと指摘。Aに対する支給額の実質は、内助の功に報いる生活保障の趣旨で支給されたものと認めるのが相当であり、甲が個人として負担すべき費用をX社が負担したものに他ならず、甲に対する役員給与に該当すると判断した。
また、Aに対する支給額を給与手当として経理処理し、出勤簿を作成して従業員であるかのように装った行為は事実を仮装して経理をすることによりAに対する支給額を支給したものと認めるのが相当と断じ、X社の主張をすべて斥けた。