お問い合わせ

  • 〒101-0032
  • 東京都千代田区岩本町1-2-19
  • 株式会社日本法令 ZJS会員係
  • 会員直通:03(6858)6965
  • FAX番号:03(6858)6968
お電話での受付時間
平日 9:00~12:00
  13:00~17:30

お問い合わせはこちら

SSL グローバルサインのサイトシール

このシステムは、SSL(Secure Socket Layer) 技術を使用しています。ご入力いただいたお客様情報はSSL暗号化通信により保護されております。SSL詳細は上のセキュアシールをクリックして確認することができます。

Article

注目判決・裁決例(横浜地裁令和元年9月18日判決)

2020年07月21日
留置きに必要な書面の不交付は重大な違法には当たらず
横浜地裁令和元年9月18日判決
---------------------------------------------------------
電話による税務調査の事前通知を受けた納税者が、口頭で伝えられても到底記憶することができないから違法であり、また資料の持ち帰りに際しても必要な書面を交付せず、調査の終了手続にも不備があったとして、処分の取消しを求める訴訟を提起した。横浜地裁は、事前通知を書面で行うべきことを定める規定はなく、資料の持ち帰り等についても重大な違法があるとは認められないとして、納税者の訴えを斥けた。
---------------------------------------------------------
食材卸業を営むXは、平成29年11月7日に戸塚税務署の調査担当職員Oから、電話により税務調査の事前通知を受け、11月16日に実地調査を受けた。
調査当日にO調査官はXの平成26年分、27年分の特定口座年間取引報告書を税務署に持ち帰った。この時、O調査官は国税通則法施行令30条の3第1項に定める「留置きに関し必要な事項を記載した書面」をXに対し交付しなかった。
戸塚税務署は調査の結果、株式の譲渡所得に関する申告漏れがあるとして、平成30年4月、更正処分等を行ったが、Xは本件調査手続に違法性があるため、課税処分を取り消すべきとして裁判に訴えた。

Xはまず、O調査官は調査に際し、Xに対して電話連絡により口頭で調査日時を伝えたものの、その他の事前通知事項を通知しておらず、国税通則法74条の9第1項に違反していると主張。そもそも、事前通知事項は多岐にわたり、口頭で伝えられても到底記憶することができないから、口頭で行うこと自体憲法31条の趣旨等に違反するとした。
また、取引報告書はXの同意なくO調査官が持ち帰ったものであり、書面の交付も行わなかったことは意図的に職権を濫用したものであるとした。
さらに、調査結果の内容の説明は現実に納税義務者に対して実施すべきところ、戸塚税務署は調査後もXに説明をしないまま課税処分を行っており、国税通則法74条の11第2項に違反していると主張した。

横浜地裁は、まず、調査の事前通知手続について、O調査官は調査事務に関する経験が豊富であり、本件調査に当たっても事前通知事項が記載されたチェックシートを作成した上、Xに電話していること、Xは少なくとも調査日時については理解していたことが認められ、事前通知事項が告知されなかったと認めることはできないと指摘。また、事前通知を書面で行うべきことを定める規定はなく、口頭による通知であってもメモを控えるなどして記録することが十分可能であり、事前通知の要件に何ら欠けるところはないと判示した。
また、提出物件の留置き手続については、Xは取引報告書を持ち帰ることについて異議を述べなかったことから、同意していたものと認定。書面の作成・交付を行っていないことは事実であるが、このような手続の過誤が刑罰法規に触れ、公序良俗に反し又は社会通念上相当の限度を超えて濫用にわたる等重大な違法を帯びているとはいえないから、留置き手続に重大な違法があるとは認められないと一蹴した。
さらに調査の終了手続については、O調査官はXに対する調査結果の連絡のため、複数回にわたりXに架電したが、Xの応答はなく、その後3回にわたって連絡票を郵送し、調査結果の説明のために来署を求めたものの、Xは来署しなかったと指摘。これらの事実から、O調査官は調査結果の内容の説明を実施するため相応の努力をしたにもかかわらず、Xは説明を受ける利益を自ら放棄したものと認められるから、現に説明を受けていないとしてもその手続に違法な点があるとは認められないと判断。Xの訴えをすべて却下した。