転売目的の住宅用建物の購入費は共通仕入れに該当(ムゲンエステート事件)
東京地裁令和元年10月11日判決
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マンションの販売業者が、現に賃借人が入居しているマンション建物を購入し、その後第三者に転売するビジネスを行っていた。業者は消費税の仕入税額控除の計算上、個別対応方式を採用し、上記居住マンション購入費は「課税売上げにのみ要する課税仕入れ」として処理していたところ、課税庁は「共通課税仕入れに区分すべき」として否認。業者はこれを不服として提訴したが、東京地裁の判断も、課税庁の処分を全面的に認める内容となった。
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中古マンションの買取再販売業を営むX社が販売用として仕入れた中古マンションの一部には、住宅用として現に賃貸されている物件も含まれていた。X社はこれらの物件を転売する目的で取得していたため、消費税の仕入税額控除の計算上、購入価額の全額を「課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れ」に区分し、確定申告をしていた。
日本橋税務署長は、平成29年7月、住宅用賃貸部分を含む建物に係る課税仕入れは、「課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要する課税仕入れ」に区分されるとして、更正処分等を行った。X社はこの処分を不服として、提訴に及んだ。
X社は裁判で、事業者の目的が課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等の双方を含む場合には、事業者がその課税仕入れを行った「最終的ないし主たる目的」がいずれの取引を行うことにあるのかによって判定すべきと指摘。仮に付随的な目的としてその他の資産の譲渡等が含まれていたとしても、最終的な目的で判定すべきと主張した。
また、このことは、平成元年当時に発行された質疑応答集においても、例えば、販売目的で取得した土地を資材置場として利用している場合の造成費の用途区分について「一時的に自社の資材置場として使用しているとしても、『非課税資産の譲渡等にのみ要するもの』となります」と記載され、最終的な目的が販売であることを理由として判定していることなどからも明らかと強調した。
一方で課税庁側は、本件各建物は仕入れを行った日において、いずれもその全部又は一部が住宅貸付けの対象とされており、賃借権付売買であったこと、X社は売主から賃貸人としての権利義務を承継し、同日以降の賃貸料を現に収受しており、X社の決算説明資料でも「投資用不動産保有期間中の賃貸収入は安定収入として経営基盤を下支え」するものと説明されていたことから、X社は賃貸料を収受することをも意図した上で課税仕入れをしたものと認められると主張。本件課税仕入れは非課税取引である住宅貸付けにも要するものであり、その他の資産の譲渡等に要するものであるとした。
東京地裁は、用途区分の判定において課税仕入れの目的が考慮されるとしても、消費税法30条2項1号の文言や個別対応方式における用途区分に共通課税仕入れが設けられていることに照らすと、ここで考慮される課税仕入れの目的が、X社が主張するような「最終的ないし主たる目的」に限定されると解すべき理由はないと判断し、X社の主張を斥けた。
また、X社が主張する質疑応答集の記載についても、あくまで個別の設問に対する回答であって、必ずしも課税仕入れがされた日に当該土地を自社の資材置場として使用することが予定されていたと読み取ることはできず、X社が主張する解釈を読み取るのは困難と判示。X社のその他の請求もすべて棄却し、課税処分を適法と判断した。