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注目判決・裁決例(大阪地裁令和元年11月7日判決)

2020年09月04日
従業員による不正行為は納税者の行為と同視できるか
大阪地裁令和元年11月7日判決
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経理担当の従業員が仕入れを水増しすることにより利益を少なく見せ、その差額約1億円を横領していたことが発覚。税務署はこれを納税者本人による隠蔽仮装として重加算税を賦課した。納税者はこれを不服として訴えたものの、大阪地裁は「従業員の不正行為をチェックする体制を整備せず、安易に巨額の横領を許してしまった納税者に非がある」と判断、課税処分を適法と認めた。
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京都府を中心に複数のパチンコ店を営むX社に、平成28年10月、中京税務署が税務調査に入った。その結果、総勘定元帳の仕入高の欄に、1店舗につき2件の仕入高が掲載されている日が複数存在することが判明。精査したところ、経理担当社員のCが、平成24年から平成28年までの5年間に計72回、計約1億700万円の架空仕入れを計上した上、横領していた事実が発覚した。
X社はCを業務上横領で告訴するとともに、架空仕入れをしていた各事業年度の修正申告書を提出したところ、中京税務署長は、虚偽の仕入高を計上していたことなどを理由として、X社に対し重加算税の賦課決定処分を行った。X社はこの処分を不服として、提訴に及んだ。

争点は、「従業員による隠蔽仮装行為を納税者本人の行為と同視できるか否か」。
裁判でX社は、法人の従業員に対する管理・監督不足に対し、重加算税という国家的制裁を加えることは、「納税者が過少申告をするにつき隠蔽仮装という不正手段を用いていた場合に、過少申告加算税よりも重い制裁を課すことによって悪質な納税義務違反の発生を防止する」という重加算税の趣旨に反するものであるし、中小零細企業に対して過度な管理を要求するものであり、極めて不当と強調。
また、Cの行為に全く気付かずにいた点でX社の落ち度があったとはいえるものの、そのことだけではCの行為をX社の行為と同視することはできないとも主張した。

大阪地裁は、Cは役職こそ付されていないものの、X社から経理上の重要な権限を与えられていたこと、X社では代表者が経理に詳しくなかったため、経理事務が従業員に任せきりになっていたが、特段の不正チェックを行っていなかったこと、日報や振替伝票にはCの押印があるものの、社長印や上司の押印はないなど、経理処理に関する指揮監督が行われていた様子がうかがわれないことなどから、Cの隠蔽仮装行為を誘発しやすい状況にあったにもかかわらず、是正措置等は講じられていなかったといわざるを得ないと指摘。
さらに、Cの行為は特段巧妙な手段で行われたものではなかったことから、X社において定期的に入金額の確認や仕訳データと日報・振替伝票の照合が行われていれば架空仕入れの事実を容易に認識することができたとし、X社はこれらの措置を講じずに隠蔽仮装行為に基づいて過少申告をしたのであるから、Cによる架空仕入れの計上・入力をX社の隠蔽仮装行為と同視することができると判断。X社の請求を棄却した。