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注目判決・裁決例(東京地裁令和元年11月21日判決)

2020年09月18日
帳簿等の不提示は不保存に当たるとして仕入税額控除を否認
東京地裁令和元年11月21日判決
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課税庁からの再三にわたる調査要請を拒否し続けた納税者に対し、仕入税額控除を否認する旨の課税処分が下された。納税者は、帳簿の不提示と不保存は全くの別概念であるなどとして提訴したが、東京地裁は帳簿の不提示は不保存に該当すると判示し、納税者の請求を全て棄却した。
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遊戯場の経営等を行うX社に対し、平成26年2月、課税庁調査担当者が同社の事務センターに臨場し、税務調査の要請を行った。しかし、事前通知がなかったため、X社の税務代理人であるA税理士はこれを拒否。
以後、平成27年5月までの約1年4か月の間、再三にわたる調査要請もすべて対応を拒み続け、ついに平成27年6月、課税庁はX社の平成24年6月期~平成26年6月期までの消費税等について、仕入税額控除を否認する更正処分等を行った。
X社はこの処分を不服として提訴に及んだ。

主要な争点は、本件が消費税法30条7項にいう「帳簿等を保存しない場合」に当たるか否か。
これについてX社は、文理上、帳簿等を「提示しない」ことは「保存しない」ことと全く別の概念であり、累積的な課税を排除するという消費税制度の本質に照らせば、帳簿等を「保存しない場合」という消費税法30条7項の文言は厳格に解釈すべきであり、「提示しない」場合を含めて解釈することは租税法律主義に反すると主張。
また、調査担当者は、X社が仕入税額控除の否認により約38億円という極めて多額の課税処分を受ける旨の認識を欠いていることを認識しながら、具体的な時期を示した上で帳簿等の提示を催告し、多額の不利益を受けてもなお提示しないかという最終的な選択を示しての催告をしなかったから、憲法が定める適正手続の保障に反するなどと強調した。

東京地裁は、まず、消費税法30条7項の規定について、当該課税期間の課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿又は請求書等が税務職員による検査の対象となり得ることを前提にしているものであり、事業者が国内で行った課税仕入れに関し、帳簿又は請求書等を保存している場合において、税務職員がそのいずれかを検査することにより課税仕入れの事実を調査することが可能であるときに限り、仕入税額控除を適用することができることを明らかにするものであると解される、と指摘。
さらに、事業者が帳簿及び請求書等を整理し、これらを所定の期間及び場所において、税務職員による検査に当たって適時に提示することが可能なように態勢を整えて保存していなかった場合は、「帳簿等を保存しない場合」に当たり、仕入税額控除は適用されないというべきであると判断、課税処分を適法と認めた。
なお、X社が主張する課税庁からの催告については、そもそも税務職員が消費税に関する調査に係る質問検査権を行使するに当たり、仕入税額控除の否認の仕組みを教示すべきことを定める法令の規定はなく、その教示を欠く帳簿等の提示の求めが違法となる根拠はないとして一蹴。
また、税の専門家であるA税理士や複数の弁護士が関与しており、帳簿等の不提示は仕入税額控除の否認につながると了知できない状況にあったとは認め難く、調査担当者は「仕入税額控除を否認せざるを得ない可能性がある」旨を記載した連絡票を計4度にわたり送付していたのであるから、X社において仕入税額控除の否認についての認識を欠いていたものとも認め難いと判示した。