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注目判決・裁決例(大阪地裁令和元年12月5日判決)

2020年09月25日
代表取締役による不正行為は損害発生時に賠償請求権が発生
大阪地裁令和元年12月5日判決
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代表取締役が取引先からのリベートを個人で受け取ったり、取引先と共謀して架空の広告宣伝費を計上するなどの不正行為を行っていた。このことが明るみになり、代表取締役は辞任、損害賠償請求に応じたが、損害賠償請求権の取得に係る益金計上は、損害の発生した事業年度に行うべきか、請求権の確定時に行うべきかが争いとなった。大阪地裁は、「損害の発生と同時に損害賠償請求権も発生する」とする国側の主張を支持し、納税者の請求を棄却した。
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不動産業を営むX社では、創業者の甲及びその子の乙が代表取締役を務めてきたが、平成18年3月、親族ではない営業部出身のAに代表取締役を任せることとなった。
Aは取引先であるB社から広告宣伝費に係る割戻し(バックリベート)の支払を受けていたにもかかわらず、これを雑収入として益金の額に算入せず、個人的に費消していた。また、他の取引先C社との間でも、折込チラシ制作等の役務提供を受けた事実がないのに架空の広告宣伝費を支払って損金に計上していた。
このことが明らかになったため、Aは平成26年9月、代表取締役を辞任するとともに、同月から12月までの間に損害賠償債務に対する支払として約3億円相当の金員及び株式をX社に対して支払った。
X社はその後もAとC社関係者に対し計約5億8,000万円の損害賠償請求訴訟を起こし、平成30年4月及び平成31年3月に、Aに対して約1億5,000万円、C社関係者に対し約8,000万円の請求を認容する旨の判決が下された。
一方、X社の税務処理については、枚方税務署長より、平成27年4月に平成22年3月期の法人税の青色申告承認の取消処分、平成28年7月に平成22年3月期~平成26年3月期までの更正処分、重加算税の賦課決定処分が行われた。X社はこれらの処分を不服として裁判所に提訴した。

主要争点は、「本件各不正行為により原告が取得した損害賠償請求権を本件各事業年度(平成22年3月期~平成26年3月期)の益金の額に算入すべきか否か」。
これについてX社は、(1)本件各事業年度の確定申告はAの代表取締役在任中に行われており、AがX社の代表者として、共同不法行為者であるB社やC社等を相手に損害賠償請求権を請求することはあり得ないこと、(2)甲らやX社の経理担当者、顧問税理士等が本件各不正行為を確知することは不可能であり、損害賠償請求権の行使も期待し得ない状況であったこと、(3)Aは代表取締役であったとはいえ、甲らから経営を委託されているだけの存在にすぎず、Aの行為をX社の行為と評価すべきではないことから、当該損害と同額の金額を益金に算入することは不可能であったと主張。
また、本件架空広告宣伝費のうちC社からAに還流された金額が不明であることなどからすれば、損害額や損害賠償義務者については別件民事訴訟の判決の確定を待たなければ認識し得ないから、損害賠償請求権の行使が可能になるのは、訴訟の判決確定時であると強調した。

これについて大阪地裁は、まず、不法行為に基づく損害賠償請求権については、通常、不法行為による損失が発生した時には同額の損害賠償請求権も発生、確定しているから、不法行為による損失は、損失が生じた事業年度の損金の額に算入し、これと同時に取得する損害賠償請求権も同事業年度の益金の額に算入すべきであると整理した。
その上で、本件リベートの金額及び本件架空広告宣伝費の金額は、ともに不法行為による損失として損金の額に算入すべきと指摘。さらに、AはX社の意思決定機関として包括的権限を有する代表取締役であったのだから、代表取締役の行為は株式会社の行為であるというほかなく、X社にとって不正行為に基づく損害賠償請求権の実現可能性を客観的に認識することができたといえ、損金算入と同時に損害賠償請求権も益金算入すべきと判断、X社の請求をいずれも棄却した。