お問い合わせ

  • 〒101-0032
  • 東京都千代田区岩本町1-2-19
  • 株式会社日本法令 ZJS会員係
  • 会員直通:03(6858)6965
  • FAX番号:03(6858)6968
お電話での受付時間
平日 9:00~12:00
  13:00~17:30

お問い合わせはこちら

SSL グローバルサインのサイトシール

このシステムは、SSL(Secure Socket Layer) 技術を使用しています。ご入力いただいたお客様情報はSSL暗号化通信により保護されております。SSL詳細は上のセキュアシールをクリックして確認することができます。

Article

注目判決・裁決例(東京地裁令和2年1月30日判決)

2020年10月07日
会社業績減少の中での役員給与増額は不相当高額と認定
東京地裁令和2年1月30日判決
---------------------------------------------------------
会社の業績等が減少傾向にある中で代表者の役員給与を増加させたことは不自然であり、不相当に高額と認定して争われた事案で、東京地裁は、類似法人の役員給与支給状況などから考えても不相当に高額と認められるなどと判断。課税庁の処分を適法と認めた。
---------------------------------------------------------
自動車の輸出入事業等を営むX社は、平成23年7月期~平成27年7月期までの事業年度において、代表者であるAに対し2億7,200万円~5億2,000万円を定期同額給与として支給した。
春日部税務署長は、Aに対する役員給与は同業類似法人における役員給与の支給状況等に照らして不相当に高額だとして、平成27年12月、法人税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を行った。X社は、この処分を不服として提訴に及んだ。

X社は裁判で、Aはマレーシアに在留し、(1)顧客の意向把握、(2)把握した意向に沿う中古自動車をオークションで落札するための使用人への指示、(3)落札した自動車の顧客への売却等の中古自動車販売に必要な業務を一手に行うとともに、(4)広告宣伝活動、(5)顧客との信頼関係構築活動、(6)顧客から寄せられたクレームへの対応、(7)顧客に対する支払の催促といった附随業務についても自ら行っていたことを強調。いわばX社の事業面における業務全般を1人で担当していたのであって、その結果X社は売上70億円超の極めて高い業績を達成したのであるから、Aの職務の内容が中古自動車販売等を目的とする一般的な法人の役員において想定される職務の範囲を大きく超えるものであったことは明らかと指摘した。
また、課税庁が抽出した同業類似法人は、(1)従業員数、(2)改定営業利益、(3)従業員1人当たりの売上金額及び改定営業利益額、(4)他の企業からの独立性、(5)主たる事業の内容等の点で、X社とは事業の規模ないし性質を異にしているとして、X社と「同種の事業を営む法人でその事業規模が類似するもの」に当たらないと主張した。

これについて東京地裁は、まず、Aの職務の内容は、中古自動車販売業を目的とする法人において、営業や販売を担当する役員について一般的に想定される職務の範囲内にあるものであって、X社の規模の会社としては珍しいものではないと指摘した。
また、本件事業年度におけるX社の売上金額が約69億円から約89億円、売上総利益が約8億9,000万円から約10億円であったが、本件各事業年度を通じて減少傾向にあり(平成22年7月期と比較すると、約2~3割の減少)、営業利益にAへの役員給与を加算した改定営業利益も、下げ幅こそ少ないものの、やはり減少傾向となっていることに着目。
同じく同社の使用人に対する給与の支給額も減少傾向にあったものの、Aの役員給与のみ平成22年7月期の1億2,000万円と比べて約2~4倍、金額にして4億円増加していることから、Aの役員給与の額の高さ及び増加率は著しく不自然であると評価した。
さらに、X社の同業類似法人の抽出基準及び抽出対象区域は合理的なものと認め、このような役員給与の支給状況の較差は、Aの職務内容や職責等を踏まえても、合理的な範囲を超えるものといわざるを得ないと判断。X社の請求をいずれも棄却した。