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注目判決・裁決例(最高裁令和2年7月2日判決)

2020年10月30日
制限超過利息等の過年度処理は公正処理基準に合致せず
最高裁令和2年7月2日判決
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貸金業者が破産後に制限超過利息等の不当利得返還請求を受け、その後確定したことを受けて、同利息を受領した各事業年度に遡って益金の額を減額する更正の請求を行ったところ、「返還が確定した日の属する事業年度に損金の額に算入すべき」として否認された事案で、最高裁は「受領した事業年度に遡って益金の額を減額することは公正処理基準に合致する」として納税者の主張を認めた大阪地裁判決を破棄し、この処理は公正処理基準に従ったものとはいえないと判示した。
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消費者金融業を営むA社は、平成24年7月、破産手続開始決定を受け、Xが破産管財人に選任された。
A社は顧客から、利息制限法の制限利率を超えて支払われた利息及び遅延損害金について不当利得返還請求を受けていた。破産手続の中でこれら過払金返還請求権に係る破産債権が確定したため、Xは平成27年8月に約2万人に対して約3億5,000万円を、平成28年8月に約6万6,000人に対して約12億2,000万円を配当した。
一方でXは平成27年6月、上記過払金返還請求権に係る破産債権が確定したことを受けて、これらの原因である制限超過利息等を受領した平成7年3月期~平成17年3月期までの各事業年度に遡って益金の額を減算、過払法人税について更正の請求を行った。
ところが所轄税務署長は、「制限超過利息等が法律上の原因を欠くものであったことが破算手続において確定したとしても、その確定の事由が生じた日の属する事業年度において損金の額に算入(前期損益修正)すべき」として、更正をすべき理由がない旨の通知処分をした。
Xはこの処分を不服として提訴した。

一審・大阪地裁平成30年1月15日判決は、課税処分を適法とする判決を下したものの、続く控訴審・大阪高裁平成30年10月19日判決は、「破産会社は破産手続による清算の目的の範囲内で存続するにすぎないから、破産会社には会社法上の前期損益修正に係る規定は適用されない」と判断した。
また、制限超過利息等の受領が法律上の原因を欠き、これを返還すべきことが破産手続きで確定した場合には、破産会社が遡って法人税の減額分につき還付を受けて過払金返還請求権を有する破産債権者に配当することに合理性が認められるとし、よって制限超過利息等を受領した日の属する事業年度に遡って益金の額を減算する計算をすることは、公正処理基準に従った計算方法に合致すると判示し、Xの請求を認容した。

これに対し最高裁は、まず、法人税の課税においては、事業年度ごとに収益等の額を計算することが原則であるといえるから、貸金業を営む法人が受領し、申告時に収益計上された制限超過利息等につき、後にこれが制限利率を超えていることを理由に不当利得として返還すべきことが確定した場合においても、これに伴う事由に基づく会計処理としては、当該事由の生じた日の属する事業年度の損失とする処理、すなわち前期損益修正によることが公正処理基準に合致するというべきと指摘。
さらに、法人税法等においては、法人が受領した制限超過利息等を益金の額に算入して法人税の申告をし、その後の事業年度に不当利得返還請求権に係る破産債権が破産手続により確定した場合に前期損益修正と異なる取扱いを許容する特別の規定は見当たらないとし、そうすると、制限超過利息等の受領の日が属する事業年度の益金の額を減額する計算をすることは、公正処理基準に従ったものということはできないと解するのが相当であると判示。
原審の判断は是認することができないとして破棄し、Xの請求を棄却した。