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注目判決・裁決例(大阪地裁令和2年6月11日判決)

2020年12月18日
「課税仕入れを行った日」は契約日ではなく引渡日
大阪地裁令和2年6月11日判決
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金地金の取引を行うことで消費税の還付を受ける、いわゆる「金地金スキーム」で、土地建物の「課税仕入れを行った日」は契約日か、引渡しを受けた日かが争いとなった。大阪地裁は「権利が確定した日は引渡日」と判示し、納税者の請求を斥けた。
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不動産賃貸業等を営むX社の前身であるA社は、平成24年4月20日、金地金200kgを91万4,550円で購入し、同月25日に89万5,200円で売却。その後A社は新設分割によりX社を設立した上で解散した。X社は新設分割法人であるため、消費税の納税義務の有無については、消費税法施行令23条1項の規定により、A社の平成24年4月5日~30日までの事業年度の課税売上高(上記89万5,200円)を1年換算した金額が1,000万円を超えることとなる結果、X社は平成26年3月7日~4月30日の課税期間(本件課税期間)において、課税事業者となった。
X社は平成26年4月30日、B、Cから土地建物を代金3億6,000万円(消費税等相当額を含む)で購入する契約を締結。同日付で未払金勘定を相手科目として、本件不動産を土地、建物及び建物附属設備勘定に資産計上した。
つづいて5月26日、X社はB、Cに対し売買代金の全額を支払い、本件不動産の登記を行った。
X社は本件課税期間の消費税等について、建物の取得対価、司法書士報酬の額に係る消費税を控除対象仕入税額に算入の上、確定申告した。
課税庁は平成29年3月、本件建物等に係る税額は本件課税期間の消費税の計算において仕入税額とは認められないとして更正処分・賦課決定処分を行ったため、X社はこれを不服として提訴に及んだ。

主要な争点は、本件建物の取得に係る「課税仕入れを行った日」は本件課税期間に属する契約日であるか、翌課税期間に属する引渡日であるか。
課税庁は、「課税資産の譲渡等」の日とは、その資産の同一性を保持しつつ他人に移転することにより、譲渡人の下で生じた付加価値が移転した日をいうものと解すべきとし、当該資産が譲渡人から譲受人に引き渡された日をいうものと主張した。
これに対しX社は、「課税仕入れを行った日」とは、引渡しがあった日と譲渡契約の効力発生日を指すものであって、納税者は消費税法基本通達9-1-13ただし書に沿った解釈を選択することが許容されていると反論した。
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(固定資産の譲渡の時期)
9-1-13 固定資産の譲渡の時期は、別に定めるものを除き、その引渡しがあった日とする。ただし、その固定資産が土地、建物その他これらに類する資産である場合において、事業者が当該固定資産の譲渡に関する契約の効力発生の日を資産の譲渡の時期としているときは、これを認める。
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大阪地裁は、「課税仕入れを行った日」とは課税資産の譲渡等による対価を収受する権利が確定した日(譲受側から見ればその対価を支払うべき義務が確定した日)をいうものと解するのが相当、とした上で、権利が確定したというためには、権利が発生したというだけでは足りず、客観的にみて権利の実現が可能な状態になったことを要するというべきと指摘。
X社は、上記通達ただし書により契約日基準が無条件に認められる旨主張するが、権利の確定の有無という視点から検討した場合、無条件に契約の効力発生日の時点に権利が確定するなどということはできないと強調した。
さらに、5月26日にB、CがX社への所有権移転登記手続をし、X社において本件不動産の使用収益が可能となり、本件不動産の引渡しがあったというべきであって、本件建物に係る売買代金請求権が客観的にみて実現可能となった時点、すなわち同請求権について権利が確定した時点は同日であると認めるのが相当と判断。したがって、「課税仕入れを行った日」は5月26日であり、本件課税期間には属さないため、課税処分に違法はないとした。