高級ブランド服や宝飾品の購入は交際費ではなく給与に該当
大阪地裁令和2年6月25日判決
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代表者の妻である副社長が会社の金で高級ブランド服や宝飾品を購入し、これらの費用を交際接待費として経理していたところ、副社長に対する給与等に該当するとして税務署から否認を受けた。大阪地裁は、これらの費用はすべて副社長個人のための支出と認め、課税処分を適法と判断した。
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鋼材等の売買を業とするX社は、創業者の孫である甲が代表取締役会長に就いており、甲の妻である乙も取締役副社長の地位にあった。
乙は平成24年6月~平成26年12月までの間に、シャネル、エルメス等の高級ブランド服やダイヤモンドリングなどの宝飾品など、計約6億7,000万円を購入した。X社は平成25年12月期、平成26年12月期の確定申告において、費用のほとんどを交際接待費として計上していた。
平成28年10月、課税庁はX社に対し、これら購入の費用は乙に対する給与等に該当するとして納税告知処分及び不納付加算税賦課決定処分等を行った。X社はこれらの処分の取消しを求めて提訴した。
裁判で課税庁は、X社は本件服飾品等の購入費を交際接待費に計上しているが、贈答先等の具体的内容を一切明らかにしていないこと、本件服飾品等は甲・乙の自宅に保管されていること、乙自身がこれらの一部は自分の所有物であると供述していること、宝飾品については、乙の希望するデザインや乙のサイズに合わせて製作されていること等から、これらはいずれも乙の個人的な購入等であったとみるべきであり、乙はX社から経済的利益の供与による利得を得たものというべきと主張した。
これに対しX社は、乙の職責は販路開拓及び商機獲得のための異業種の経営者等との交流・交際であり、これらの者に対する贈答品の選定・購入は乙の担当業務であったと強調。乙はX社の機関として服飾品等を購入していたにすぎず、また宝飾品については、X社の非常時に売却をも予定する資産性の高い棚卸資産として乙が購入したものだと反論した。
これについて大阪地裁は、本件服飾品等は高級ブランドの婦人服、呉服等女性用のものがほとんどであり、他人への贈答品であったとみるには不自然であること、乙は「キチンとした格好をして生活するのが当たり前」という理由で購入していることや購入した服やバッグを自宅に置いていることなどから、いずれも乙の個人的な購入のためにされたものと認められると判断した。
また、本件宝飾品等についても乙の個人的な購入であったものと推認できるとした上、「資産性の高い棚卸資産として購入していた」というX社の主張については、棚卸等の実施や在庫表、資産管理台帳、販売に係る事業計画等の作成をしておらず、X社の資産又は商品として取り扱っていた形跡は全くうかがえないと一蹴。X社の主張はいずれも理由がないとして棄却した。