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注目判決・裁決例(東京地裁令和2年2月19日判決)

2021年01月22日
肉用牛の売却時に農協の関与を装った行為は仮装と認定
東京地裁令和2年2月19日判決
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肉用牛の売却に際して、農業協同組合に委託しているように形式を整えて税務上の特例を適用した行為は「仮装」及び「偽りその他不正の行為」に該当するか否かが争われた。東京地裁は、本来農協が主体的に関与することが必要であることを納税者は認識していたと認定し、「仮装」及び「偽りその他不正の行為」に該当すると判断した。
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肉用牛の飼育・販売を業とするX社(農業生産法人)は、飼育した肉用牛をグループ内の買い主企業に売却していたが、その際、農業協同組合を委託先とし、肉用牛売却証明書の交付を受けていた。
租税特別措置法では、農業生産法人が農協等に委託して肉用牛を売却した場合、免税対象飼育牛の売却に係る利益の額は損金の額に算入する旨の特例を規定している(67条の3第1項)。X社は、上記取引について本特例を適用した上、法人税の申告を行っていた。
平成27年3月、真岡税務署長は、上記取引においてX社が農協等に委託した行為は形式的なものにすぎず、実際はX社と買い主との直接取引であったとして、これらの行為は法人税法127条1項3号及び国税通則法68条1項の「仮装」、及び国税通則法70条5項(現4項)の「偽りその他不正の行為」に該当するとして、平成19年12月期~平成25年12月期の7年間の青色申告承認取消処分、法人税の更正処分及び重加算税の賦課決定処分を行った。
X社はこの処分を不服として、裁判に訴えることとなった。

裁判でX社は、「仮装」に該当するためには、仮装することについての認識が必要であると指摘。
本特例に関する措置法67条の3第1項2号の規定「委託して売却」のように、法的評価を含む事実については、納税者等の行為が客観的にみて事実と異なる外観を形成する行為であるという前提事実の存在のみで、仮装することを認識していたと推認することはできないと主張した。
また、本件で農協は、子牛の個体や状態等の確認及び体重の測定をし、X社との協議により売却価格の算定方法を定め、売却価格の確認及び決済をするなど、子牛の売却価格の形成等に十分に関与しており、その役割等が形式的なものにとどまっているとはいえず、X社と買い主との直接取引には当たらないとも主張した。

これについて東京地裁は、子牛の売却価格の決定については、農協の担当者が子牛の体重測定には関与していたものの、X社において市場の相場から売却価格を算定した上で、社内の稟議を経て決定していたこと、農協の担当者はその後X社からのメール連絡によりその金額を確認していたにとどまり、出荷明細書及び販売明細書もX社において作成していたことからすれば、売却価格の形成について、農協が関与している状況になかったというべきと指摘。X社と買い主が直接取引をしていたものと認めるのが相当と認定した。
そして、X社はこれらの委託売却に関連する一連の書類を作成し、農協から交付を受けた売却証明書を確定申告書に添付することにより、客観的にみれば、あたかも「委託して売却」であるかのように装っていたものであるから、X社としても、本件各取引がそのようなものであることを、少なくとも未必的には認識していたものと解されるとした。
そうすると、X社はこのような「装う行為」を故意に行っていたと認めるのが相当であり、これらの行為は「仮装」及び「偽りその他不正の行為」に該当すると判断。X社の請求を棄却した。