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注目判決・裁決例(東京地裁令和2年2月19日判決(2))

2021年02月05日
平均功績倍率法による役員退職給与の算定は合理的
東京地裁令和2年2月19日判決(2)
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代表者の退任に際し、最終月額報酬を基礎に勤続年数34年及び功績倍率を8倍として退職給与を算定・支給した法人に対し、「不相当に高額」として税務署から待ったがかかった。
原告は同業類似法人の役員退職給与額の最高額あるいは最高功績倍率を用いるべきと主張したが、東京地裁は、平均功績倍率法は同業類似法人の諸要素の差異等が捨象され、平準化された数値が得られるため合理的と判断。原告の主張を斥けた。
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肉用牛の飼育、販売等を業とするX社は、平成25年2月に開催した臨時株主総会において、元代表者甲の退職給与の支給を決議。退職給与額は、最終月額報酬額の110万円を基礎とし、勤続年数を34年及び功績倍率を8倍として、2億9,920万円と算定、3月に同額を甲に支給した。
真岡税務署長は、役員退職給与が「不相当に高額」として否認。争訟に発展した。

裁判で課税庁は、役員退職給与の相当額の算定に当たって「平均功績倍率法」を採用し、複数の国税局管内から日本標準産業分類の小分類「畜産農業」を基幹事業とし、売上金額が2分の1~2倍の範囲内(いわゆる倍半基準)により3法人を抽出した経緯を説明。3法人の平均功績倍率は1.06倍であり、これをもとに算定すると役員退職給与額は3,964万円となり、これを超える2億5,956万円は不相当に高額な部分に該当すると主張した。
これに対しX社は、以下のように反論した。
(1) 平均功績倍率法はあくまで同業類似法人における平均的な役員退職給与額にすぎない。役員の役務の対価として相当な額は一定額に限られないから、最高功績倍率により算定すべきである。
(2) 同業類似法人として抽出された3法人のうち2法人は養鶏業であり、1法人は実験動物の飼育販売業者である。X社の肉用牛生産業とでは総資産回転率、売掛債権回収期間等の経営指標が大きく異なり、売上高に対する役員報酬率に大きな違いがある。よって抽出法人は同種の事業とはいえず、日本標準産業分類の細分類「肉用牛生産業」及び「酪農業」から抽出すべきである。
(3) 肉用牛・乳用牛の飼養者はその大半が札幌国税局及び熊本国税局管内の法人であるが、抽出法人が含まれる各国税局は広域に及び、経済事情が類似する地域とはいえない。

東京地裁は、以下のように判示し、X社の請求を棄却した。
(1) 平均功績倍率法を算定することにより、同業類似法人間に通常存在する諸要素の差異や個々の特殊性が捨象され、より平準化された数値が得られるのであり、功績倍率の最高値や役員退職給与の最高額は法人の特殊性等に影響されるものであって、指標としての客観性が劣るといわざるを得ない。よって、平均功績倍率を採用することが相当でないとみるべき事情は見当たらず、X社の主張は採用できない。
(2) X社の営む肉用牛生産業及び酪農業に限定すると、十分な数の同業類似法人を得られないと思料されるから、畜産農業に基準を広げたものと認められる。両者間で退職役員の功績倍率にどれほどの有意な差異が生じるのかについて十分な立証がされたとはいい難く、上記基準が不合理であるとはいえない。
(3) 札幌局及び熊本局管内で肉用牛生産業及び酪農業の割合が高いことは認められるものの、今回の抽出対象地域内にもこれらの事業を営む法人が相当な割合で存在していることが認められ、さらに調査対象地域を広げる場合には、むしろ課税庁における恣意を介入させる危険を増大させる結果となり、相当ではない。