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注目判決・裁決例(大阪地裁令和2年3月27日判決)

2021年04月14日
同性パートナーへの死因贈与は認められず
大阪地裁令和2年3月27日判決
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40年以上にわたり生活をともにした同性パートナーが、被相続人の生前に財産の死因贈与を口頭で合意していたとして、全財産を相続した親族を相手取り訴訟を提起した。大阪地裁は、被相続人は親族に財産を相続させる旨、原告にも話していたこと、原告との養子縁組についても検討はしたものの、死亡時点まで実行されなかったことなどから、財産を死因贈与する明確な意思表示をしていなかったと認定。原告の請求を斥けた。
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原告Xは昭和49年ごろから、同性パートナーであるAが賃借する建物でAと同居し、仕事もAが代表者を務めるデザイン事務所Bでテキスタルデザイナーとして働いてきた。Aには妹のYをはじめとする親族がいたが、自身が同性愛者であることは隠していた。またAは、相続等により株式や不動産を取得、保有していた。
Aは平成28年3月6日に死亡。Aの遺体は病院から警察署に運ばれたが、Aの身元確認を行ったのはYで、Xは遺体安置所に入れなかった。3月9日に葬儀が執り行われたが、Xは喪主を務めたいと申し出たものの、一般参列者としての参列しか認められず、火葬にも同席できなかった。
加えてYは3月27日、B事務所の顧客に対し、Aの死亡により廃業する旨の通知を行い、Aの荷物を搬出。4月26日には、住居からもAの荷物を搬出した。
Xはこれら一連のYの対応を不服として、Aの全財産を相続したYを相手取り、Aが所有していた不動産の所有権移転登記等を求めて提訴した。

裁判でXは、Aとは40年以上にわたり同居して、同一の生活を営んできたが、互いに高齢となり、がんに罹患するなどしたことから、余生の過ごし方について話合いを持つようになり、XとAのどちらかが先に死亡した場合には、死亡した者の全財産を生存している相手方にすべて譲渡するとの相互の死因贈与を口頭で合意したと主張。また、XとAは養子縁組をする予定であったことからも、死因贈与の合意をしていたことは明らかと強調した。

大阪地裁は、同性パートナーであるXとAの間では相手方が死亡した場合にその財産を取得するためには、死因贈与や養子縁組などの手立てが必要であることを併せ考えると、XとAの間に死因贈与の合意がなされたと推認できるようにも思えるとした上で、Aは自らが同性愛者であり、XがパートナーであることをYを含む親族にも隠すとともに、平成27年8月頃、Aの財産は妹であるYに渡すとXにも話していること、平成28年1月の時点でもAはXとの養子縁組について親族を納得させなければ話が進まない旨の発言をしていたこと等から、Xに死因贈与するとの明確な意思表示をしたと認めるには疑念があると指摘した。
また、Aの死亡後、XはYの代理人に対し、Aの財産がすべてXのものであるとの主張をしておらず、かえってAの遺産は相続人が取得すればよい旨の発言をしていたこと、平成28年7月においても、Xが主張したのは、死別による財産分与あるいは事業の清算としての金銭給付であり、死因贈与合意の存在は一切主張されていなかったことなどから、死因贈与合意の成立を認めることはできないと判断。Xの請求をすべて棄却した。