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注目判決・裁決例(東京地裁令和2年9月1日判決)

2021年05月24日
土地・建物を一括取得した場合の取得価額按分で判断
東京地裁令和2年9月1日判決
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土地と建物を一括取得した納税者が、ほぼ半々の割合で取得価額を按分した上、減価償却費や消費税の計算を行ったところ、税務署から否認され、固定資産税評価額の価額比により按分すべきとして、建物は土地の2割弱とされた。東京地裁は、固定資産税評価額による評価は相当ではなく、積算価格や収益価格を加味した鑑定評価額によることが合理的と判断。課税処分を一部取り消した。
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飲食店を経営するX社は平成23年6月、東京都港区所在の土地・建物を計約25億9,000万円で競売により取得した。
X社は本件不動産について、土地については路線価に基づき約13億2,000万円、建物については類似物件の再調達価格により約12億7,000万円と算出(土地:建物=1:0.96)、この価格をもとに減価償却費や消費税の課税仕入れに係る計算を行い、法人税・消費税等の確定申告をした。
これについて船橋税務署長は、固定資産税評価額による土地と建物の各評価額の比率により本件不動産の区分を行うのが合理的として、土地を約22億1,000万円、建物を約3億8,000万円と算出(土地:建物=1:0.17)。この価額をもとに法人税・消費税の更正処分等を行った。
X社はこの処分を不服として提訴した。

裁判で国側は、固定資産税評価額は総務大臣の告示する固定資産評価基準により算出されたものであり、土地・建物の適正な時価を反映しているとした上、算出機関・時期が同一であるから、いずれも同一時期の時価を反映していると指摘。固定資産税評価額は土地、家屋及び償却資産の間の評価の均衡が図られた価格であることからすれば、各資産の固定資産税評価額の価額比を用いて按分する方法は合理的であり、法人税法及び消費税法においても合理性を欠くものとはいえないと主張した。
これに対しX社は、法人税及び消費税に係る法令・通達のいずれにおいても、土地・建物の一括譲渡の場合の各取得価額の区分について固定資産税評価額を用いなければならない旨を定めた規定はなく、法人税は合理的な純経済人を前提とするものであるから、むしろ鑑定評価等を参考にして妥当と信じる申告を行うことは当然と反論した。
ましてや本件不動産は港区の繁華街にある飲食店舗用のビルであり、実際の売買においては収益性が重視されることから、収益還元法による評価は不可欠であるところ、固定資産税評価額の決定に当たってはそのような評価はされていないことも強調した。

東京地裁は裁判の過程で、X社からの申出に応じ、M不動産鑑定士に本件不動産の鑑定評価を提出させた。これによれば、本件不動産は30億4,000万円とされ、土地は約24億7,500万円、建物は約5億5,500万円(土地:建物=1:0.22)、その他内部造作が約1,000万円と評価された。
その上で、本件のように法人税における減価償却費の額及び消費税の課税仕入れに係る支払対価の額を計算するために、一括して取得された土地・建物等の取得価額を按分する方法として固定資産税評価額による価額比を用いることは、当該資産の個別事情を考慮した適正な鑑定が行われた結果、固定資産税評価額とは異なる評価がされた場合には、固定資産税評価額による価額比を用いて按分する合理性を肯定する根拠は失われ、適正な鑑定に基づく評価額による価額比を用いて按分するのが合理的、とした。
M鑑定士による鑑定評価は、本件建物等の建設に要した実際の工事費のほか、類似建物の工事価格、鉄筋コンクリート造の事務所ビルの東京基準単価、本件建物のグレード等を考慮していること、本件不動産の収益価格については、その立地や店舗の賃貸形式、評価時が東日本大震災から3か月後であったことを踏まえた不動産市場の動向等を考察するなど専門的知見に基づく適正な評価と認め、この鑑定評価額によることが相当とした。
鑑定評価額を前提に再計算した結果、法人税更正処分等は適法、消費税更正処分等は違法と判断した。