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注目判決・裁決例(最高裁令和3年4月16日判決)

2021年06月07日
相続分が決着した後の遺言の有効性の主張は信義則違反に当たらず
最高裁令和3年4月16日判決
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法定相続分の割合による相続分を有することが一審で決着した後に、控訴審で遺言の有効性の確認を求めた訴えが「時機に後れた攻撃防御」に当たり、遺言の有効性が主張されることはないであろうという合理的な信頼を裏切るものであり、信義則に違反するとして却下された。最高裁は、却下すべきとした控訴審の判断を法令違反とし、その判決を取り消した。
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XとYはいずれも甲の子である。甲は平成24年8月に死亡し、その相続が開始した。
平成25年1月、Xの申立てにより、自筆証書遺言が検認された。遺言書には、甲の所有する財産すべてをXに相続させる旨が記載されていた。

平成26年6月、YはXに対し、自身が法定相続分の割合で相続すると主張し、甲が所有等をしていた複数の不動産について甲からXへの売買等を原因とした所有権移転登記等の抹消登記手続、Xが不動産を占有していることによる不当利得の返還、甲名義の口座から預金の一部を払い戻したことによる不当利得の返還等を求め、提訴した。
これを受けXは、平成26年11月、Xが甲の医療費等の立替えをしており、Yはその立替金債務を法定相続分の割合により相続したなどと主張し、その支払等を求める反訴を提起した。
一審は、平成28年8月、Xが甲との売買等により不動産を取得した事実は認められず、預金の払戻しは権限なくされたものであると判断。抹消登記手続を認容、不当利得返還請求を一部認容するなどした。反訴については、Xによる立替払いの事実が認められないとして棄却した。なお、一審ではYが甲の遺産について相続分を有することについては争いがないものとされ、遺言の有効性についての判断はされなかった。
Xは一審判決を不服として控訴。甲の遺言の有効性について主張したところ、控訴審はこれを「時機に後れた攻撃防御」に当たると指摘。XがYに対し遺言が有効であることの確認を求めることは、Yが遺産について相続分を有することが一審で決着し、「Xより遺言が有効であると主張されることはないであろう」とのYの合理的な信頼を裏切るものであり、またYは立替金債務を相続したと主張したことと矛盾するものであるから、信義則に反し、訴えを却下すべきものと判断し、大筋で一審の判断を維持した。

平成29年7月、Xは、あらためて遺言が有効であることの確認を求め上告。
最高裁は、一審・控訴審において遺言の有効性について判断されることはなかったが、Xは遺言が有効であると主張していたのであって、Yの信頼は合理的なものとはいえないと指摘。また、Xは反訴によって利益を得ていないことから、遺言が有効であることの確認
がされたとしても、Xが反訴の結果と矛盾する利益を得ることにはならないと判断し、Xの訴えを却下した原判決を破棄、一審に差し戻した。