輸出代行業者による商品の仕入れを仮装と認定
東京地裁令和2年1月17日判決
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衣料品の輸出代行業を営む納税者が、台湾の小売業者との間で輸出取引していたとして、仕入れに係る消費税の還付申告を行ったところ、「実際は仕入れをしておらず、形式だけを整えた仮装行為」として更正処分と重加算税の賦課決定処分を受けた。東京地裁は国側の主張を全面的に採用し、実際に商品の売買を行っていたのは台湾の小売業者と判断。納税者の請求を棄却した。
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衣料品等の輸出を業とするX社は、台湾での衣料品や靴等の小売業者の輸出代行を行っていた。
商品の多くは、まず台湾の小売業者が国内の小売業者のインターネットを通じ、あるいは直接来店して衣料品等の注文をし、その代金を支払っていた。その際、X社は国内の小売業者にX社宛の領収書を発行してもらうよう台湾の小売業者に依頼し、実際にその交付を受けるとともに、商品を仕入れたものとして経理処理していた。
また、台湾側で輸出代行業務を行うA社との間では、X社が輸出取引に係る消費税の還付申告を行い、8%(当時)の還付を受けた上で、うち7.25%分をA社に支払う旨の合意を交わし、さらにA社はその一部を台湾の小売業者に分配していた。
平成28年2月、X社は平成27年10月~12月の課税期間の消費税について、約6億3,500万円を課税仕入金額に計上した上で、還付申告を行った。しかし日本橋税務署長は、輸出取引で実際に商品を仕入れたのは台湾の小売業者であり、X社は仕入れていない商品を仕入れたかのように仮装していたとして更正処分及び重加算税の賦課決定処分を行った。X社はこれを不服として平成29年12月に提訴した。
X社は、台湾の卸売業者との間で商品が保税倉庫に至るまでの危険負担はX社が負うこと等を含む基本合意をしていたことや、商品はX社に引き渡されていたこと、商品の所有権をX社に移転する旨の合意があったこと、X社が商品の代金を立て替えることもあったことなどを挙げ、X社が国内の小売業者から商品を仕入れたといえると主張。
また、X社と台湾の小売業者との間では、X社が消費税の還付申告を行い、A社を介して還付された消費税の分配を受けるという黙示の合意が成立していたと評価でき、このような合意がある場合には課税仕入れとして認められるべきであるなどとも主張した。
東京地裁は、台湾の小売業者が国内の小売業者のホームページを閲覧して商品を調べ、X社から何らの指示も受けずに購入する商品の種類・数量を決定し、自己資金で代金を支払い、その後自己の費用で手配した国際輸送業者により輸出していたことなどの事実から、X社が商品を仕入れたと認めることはできないと指摘。
また、X社の主張する基本合意については、その証拠として提出された確認書が提訴後の平成30年7月に作成されており、その信用性は低く、基本合意がされていたとは認められないと強調した。
さらに、台湾の小売業者との間で、X社が商品を仕入れたものとし、消費税の還付を受けて小売業者に分配するとの合意があったとする主張については、消費税法を含む租税法は強硬法規であり、私人間で合意することにより「課税仕入れに係る支払対価の額」を他者に帰属させることはできないから、そのような合意によってX社の仕入れとなるものではないと一蹴した。
以上によりX社が商品を仕入れたとは認められず、また一連の行為は国税通則法68条1項にいう事実の仮装に当たるため、課税処分は適法であると判断した。